スント 9(SUUNTO 9)ランニングウォッチ・GPSウォッチレビュー

スント(SUUNTO)からフラッグシップモデルのランニングウォッチ・GPSウォッチが発売されました。

スント 9(SUUNTO 9)はスパルタンウルトラ(SPARTAN ULTRA)の後継モデルとなるGPSウォッチです。

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発売開始から少し時間が経ってしまいましたが、今回はスント9について詳しく解説していきます。

スント 9にはスント 9とスント 9 Baroの2種類があります。

スント 9 Baro スント 9のスペックについて

まずはスント 9 Baro、スント 9のスペックについて紹介していきます。

両者ともに、GPS取得頻度1秒毎で最大25時間、ウルトラモード(GPS取得頻度120秒毎)で最大120時間のバッテリーライフ。

1秒取得で持続時間が25時間は他のGPSウォッチと比較しても、優れています。

さらに、3段階(カスタムモードを含めると4段階)でGPSの補足頻度を変更でき、ランニング中でも、バッテリーモードを変更できるのは魅力的です。

例えば、ロングディスタンスレースの際に、残り時間や距離に応じてバッテリーモードを変更でき、バッテリー容量が少なくなってくると、自動的にモード変更をリコメンドしてくれる機能が搭載されています。

もちろん、バッテリーの残り時間が少なくなる前に、自分でもモード変更することも可能です。

アクティビティをスタートする前に、ボタン一つで、どのバッテリーモードで走るか選択できます。

ただし、GPS取得間隔が長くなってしまうと、カーブやスイッチバック(ジグザグに走行しなければならない場所)が多くなってしまうルートの場合、距離計測や獲得標高の精度は落ちてしまいます。

この問題を解決するために、スント 9にはFUSEDTRACK™️機能を搭載。

時計の内部にあるモーションセンサーを使って検出される、ランナーの腕の動きからGPSの読み取りの誤差を修正することが可能です。

一定のリズムを刻むことができさえすれば、ウルトラモード(120秒間隔でGPS情報を取得)でも、ある程度の距離精度を担保できる可能性がアップします。

洗練されたウォッチデザイン、高い画像解像度(320 × 300ピクセル)は健在で、スパルタンウルトラには搭載されていなかった、光学心拍計も新たに搭載されています。

<スペック>

■スント 9 Baro

サイズ:幅50×高さ50×奥行き16.8mm

重量:約81g

防水機能:10気圧(100m)

レンズの素材:サファイアクリスタルレンズ

動作時間

最大25時間/GPSデータ取得頻度1秒毎
最大50時間/ GPSデータ取得頻度60秒毎
最大120時間/GPSデータ取得頻度120秒毎
最大14日間/時計画面表示のみ

心拍計測:光学心拍計対応。

標準価格:84,240円(税込)

■スント 9

サイズ:幅50×高さ50×奥行き16.5mm

重量:約72g

防水機能:10気圧(100m)

レンズの素材:ミネラルガラス

動作時間

最大25時間/GPSデータ取得頻度1秒毎
最大50時間/ GPSデータ取得頻度60秒毎
最大120時間/GPSデータ取得頻度120秒毎
最大14日間/時計画面表示のみ

心拍計測 光学心拍計対応。

標準価格:74,520円(税込

スント 9 Baroとスント 9の違い

まず物理的なスペックの違いについては、スント 9に比べてスント 9 Baroの方が重量は重く、厚みがあるということです。使用しているレンズがスント 9 Baroの場合はサファイアクリスタルレンズ、スント 9がミネラルガラスなので、レンズの差が重量の差となってあらわれています。

機能の違いでいうと、スント 9 Baroは本体に気圧センサーを内蔵しており、周囲の空気圧を測定して気圧高度情報を提供しています。気圧センサーがあるお陰で、嵐や悪天候を予測して知らせてくれるわけです。

GPSデータと気圧高度情報を組み合わせることで、より正確な高度情報と上昇/下降のデータを得ることが可能です。

一方、スント 9は本体に気圧計を搭載していないため、GPS情報のみに基づいて高度と高度の変化(上昇 / 下降)を算出し、嵐や悪天候を予測することができません。

なので、アウトドアに特化したGPSウォッチを選ぶのであればスント 9 Baro、ランニングを中心にする方であれば(特に長時間ランニングをする機会がある方)スント 9を選ぶということになるでしょう。

スント 9 Baroの実際の使用感

ここからはスント 9 Baroの使用感を元にレビューをしていきたいと思います。

アクティビティに関する機能(スポーツモード)

まず、スントのGPSウォッチと言えば「デザイン」に目が行きます。個人的に、スントは時計全体のサイズ感、シリコン部分とベゼル部分との調和が好みです。

さらに、スントといえば、サファイアクリスタルレンズが有名。もともとスントはアウトドアウォッチとして誕生したわけなので、時計のつくりが頑丈にできています。

画像解像度も他のGPSウォッチに比べると320×300ピクセルと高く(ちなみに、ガーミンの最も解像度の高いモデルは240×240ピクセル)、非常に見やすいのが特徴です。

ウォッチフェイスは合計8つの中から好みのものを選びます。ベースとなるカラーも9色あるので、カスタムバリエーションは72通りとなります。
※上記の写真のベースカラーは水色です。

前作のSPARTAN ULTRAと大きく変わったのは、バッテリーの稼働時間が伸びたこと(GPS取得頻度1秒間で18時間→25時間)に加えて、光学心拍計が搭載されたこと。

もう一つは、前述のFUSEDTRACK™️機能によって、GPSの取得間隔が長くなったとしても、長時間(最大120時間)に渡り、ある程度の距離計測ができるようになったことです。

ただし、当然のことながらGPS取得の取得頻度が1秒の時に比べると、精度は落ちてしまうということは理解しておきましょう。

実際に計測したところでは、10kmのロードランニングで、1秒取得の場合10kmだったとしても、120秒間隔の取得の場合、12km程の表示となりました。

恐らく、使用しているうちに精度は上がってくるものと思われますが、最初のランニングではこれだけの差があったということです(参考までに)。

一定のリズムで走れない場合の誤差は、更に大きくなるでしょう。

細かいところで言うと、時計のベルト部分が簡単に着脱可能になったことです。

この改良は意外と大事なポイントで、特に時計とベルト部分の隙間に汚れが溜まることは結構あります。専用のドライバーでネジを取り外したり、取り付けたりするのはかなり面倒なので、助かります。

スント 9 Baroの重量は81gとランニング用の時計として考えると重たいので、純粋なロードランニング用のランニングウォッチとして選択するのは難しいかもしれません。

ですが、普段使いもできて、ある程度のデータの取れるGPSウォッチ、スマートウォッチとしては非常に優れている一品です。

もちろん、ランニングを含めて、トレイルランニングやトライアスロンを含めたマルチスポーツ対応の時計で、それぞれのスポーツに特化したカスタマイズが可能。

カスタマイズはMovescount(ムーブスカウント)というソフトウェア上で行います。スマホからのカスタマイズはできませんが、カスタマイズそのものはシンプルに行うことができます。

何らかのアプリをダウンロードした後に、ウォッチ内にインストールすることもできますが、既存の計測項目の中から、何を表示させるのかを選択するだけでも、十分なデータを取得できます。

ランニング中のデータは1つの画面で最大7つまで表示させることができます。

実際のランニング中に撮影したものではないので、数値が出ていない項目もありますが、上記の写真は平均のペース、リアルタイムの心拍数、リアルタイムのパワー(3秒間)、平均パワー、ケイデンス、現在の時刻、経過時間の7つを表示させています。

画面を遷移させれば、他にも自分でカスタマイズした画面やデータを表示させることが可能です。

スントの場合は、サードパーティのアプリケーションとの連携も可能で、ユーザー数が多いものだと、STRAVA(ストラバ)やTraining Peaks(トレーニングピークス)、Stryd(ストライド)との連携が可能。

マラソンやトレイルランニング、トライアスロンといったスポーツを科学したい場合は、自ずとスントもしくはガーミンを選択することになるでしょう。

トレイルランニングに関する機能

スントのGPSウォッチを語る上ではロードランニングだけでなく、やはり登山やトレイルランニングでの機能についても紹介しておかなければなりません。

言わずもがなではありますが、登山やトレイルランニングの場合はロードランニングと違って、道迷いのリスクはついて回ります。

地図読みのスキルも必要ですが、GPSウォッチのナビゲーション機能を活用すれば、コース全体のルートや現在地などを確認しながら走る(歩く)ことができます。

無計画に入山することは無いとは思いますが、事前に登山やトレイルランニングをする予定のルートをGPSウォッチ内に入れておけば、時計がナビゲートしてくれますし、ルートから外れた際は知らせてくれます。

ヤマレコなどで作成した(もしくは拝借した)GPXデータをウォッチ内にインポートすることもできますし、スントの場合はユーザーのアクティビティがヒートマップとして公開されています。

なので、自分の好きなルートを選んで、ウォッチ内に入れておくことも可能です。

スマートウォッチ機能

次にスント 9のスマートウォッチに関する機能・使用感について紹介していきます。

スントに限らず、各社のGPSウォッチはスポーツ時以外にも、ライフログ(日常生活時の心拍数や一日に歩いた歩数、消費カロリー、睡眠時間・質などを計測する)を取得したり、スマートフォンとの接続ができる、いわゆるスマートウォッチとしての機能が搭載されています。

なので、一日中時計をつけていれば、様々なデータを取得することができますし、スマートフォンからの各種通知をGPSウォッチで確認することができます。

実は筆者の場合、そこまでスマートウォッチとしての機能を重視しているわけではありません。ですが、スント 9の機能の中で、睡眠に関する機能・データは興味深く、新たにモニタリングしていきたいと思える項目のうちの一つです。

時計を付けたまま睡眠をとることで、自動的に何時に寝て、何時に起きたのか?目標とする睡眠時間との差、深い眠りに入っている時間などを計測できます。

スマートウォッチが出てくる前までは、「睡眠の質を改善する」といっても、実際に改善されたのかどうかが感覚的にしか分かりませんでした。

ですが、例えば睡眠の質を改善するための、何らかの取り組みをした結果、デーィープスリープ(深い眠りに入っている時間)が増えれば、その取組は効果があるのではないか?と考えることができるわけです。

もちろん、データが全てではありませんが、データで示されることで、改善のためにはどうしたら良いか?という思考が自然と働きます。

ダイエットしたいのであれば、まず体重計で計測をするのと同じです。計測できるものは必ず改善できるわけですから。

最後に、スント 9 Baroに関するインプレッションを動画でも解説しましたので、参考にしてみてください。

 

 

まとめ

今回はスントのフラッグシップモデルである、スント 9Baroとスント 9について、スッペックと実際の使用感についてまとめてみました。

現状はスント 9 Baroはブラックとホワイトの2カラー。スント 9はホワイト、ブラック、ライムの3カラー展開です。

とは言うものの、時計のベルト部分はお好きなものに変更することも可能(ベルトは別売)。

スントからは様々なタイプのGPSウォッチが発売されていますが、今後はスント 9と同じように、機種タイプ別にナンバリングされるそうです。

最もハイエンドのスント9を頂点として、例えばエントリー層向けならスント3、もう少し上のグレードのGPSウォッチであればスント5など。

GPSウォッチを選ぶポイントは個人差があると思いますが、個人的にはトレイルランニングやトライアスロン(共にロングディスタンス種目をメインにする方)をメインに、普段使いもできるデザインにこだわる場合は、スント 9がオススメではないかと考えています。

参考にしていただければ幸いです。