3ヶ月でフルマラソン・サブ3.5を達成するための練習計画の立て方

前回の記事では、3ヶ月のトレーニングでフルマラソンサブ3.5を達成する超具体的プロセスと題して、フルマラソンでサブ3.5を目指すための全体像、そして「考え方」をお伝えしました。

今回は「練習計画」という部分に絞って、3ヶ月でサブ3.5を達成する方法を考えていきましょう。

前回の記事では、目標を達成するための「考え方」、最終的に「戦略を立てる(つまり計画を立てる)」ことの重要性をお伝えしました。

では、どうやってサブ3.5を達成するための計画を立てていくか?

例えば3ヶ月間、LSDのみで目標は達成できるのか?

もちろん、個々で答えは変わってきます。

なので、まず始めに現在地を把握することが大切になってきます。

例えばトレーニング開始前の状況で、5,000mのタイム・・・21分10秒。10,000mのタイム・・・43分40秒だったとしましょう。

ここで、ジャック・ダニエルズ氏の提唱するVDOTの表を見てみます。

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そうすると、現在地の記録と最も近しいポイントはVDOTが47のライン。サブ3.5の中でも3時間20分を目標にした場合、5,000mが21分02秒。10,000mで43分36秒を目指すことになります。

つまり、VDOTは47のレベルです。数字には届いていませんが、非常に近い数値が出ています。

VDOT47という数字から弾き出されるのは、フルマラソンで3時間21分を越える辺り。

3時間20分を切ることが目標の場合、今のトレーニングの延長線上には、目標達成は存在しないわけです。

目標とすべきはVDOT48のライン。

なので、5,000mと10,000mの底上げを図ると共に、次なる目標値はハーフマラソンで1時間34分53秒となります。

ハーフマラソンで1時間34分53秒を出すためには何が必要か?

目標値と現在地にはギャップがありますから、そのギャップを認識する必要があります。

つまり、現状で抱えている課題は何なのか?ということです。

5,000mと10,000m、ハーフマラソンでも目標の数値に届いていないのであれば、筋持久力も、スピード持久力(スピードを維持して走る力)も、スピードしのものも足りていない可能性があります。

絶対的な有酸素能力(長時間運動をし続けられるだけの能力)が低いという可能性もあります。

なので、全体的な底上げが必要という結論に至ります。ここでは仮設を立てることが大切です。

では、3ヶ月で筋持久力、スピード持久力、スピード、有酸素能力の4つの要素を底上げしていくプロセス(計画)をどう立てていくか?

ステップとしては、

①4つの力それぞれを高めるトレーニングとは何かを認識する

②それぞれのトレーニングを組み合わせる

③3ヶ月というスパンの中で、目的を持ったトレーニングを組み立てる

この3ステップです。

具体的なトレーニング手法に関しては、マラソンに必要な練習・トレーニング方法【最新版】に記しています。

筋持久力を高めるトレーニング

マラソンで言うところの筋持久力とは、つまり長い時間筋肉を動かせる力です。

サブ3.5を目指すのであれば、少なくとも3時間半は身体(筋肉)を動かし続けなければなりません。

例えば、毎日30分走り続けていたとしても、30分を走るだけの筋持久力は付くかもしれませんが、3時間以上走ることになれば、間違いなく途中で足が動かなくなってしまいます。

なので、LSDを含めて長い時間をかけながら走るトレーニングが絶対的に必要です。

例えば、LSDやペース走は筋持久力を高め、マラソンを行う上での基礎となります。

ペース走は筋持久力を高めながら、一定ペースで走る感覚を養うことができますので、意識をして取り組むことが大切です。

筋持久力とスピード持久力が底上げされれば、本番のレースペースを身体に覚えさせることも大事になってくるでしょう。

スピード持久力を高めるトレーニング

次に、スピード持久力とは何かを考えてみましょう。

スピード持久力とはつまり、ある一定のスピードを維持して走る能力です。

サブ3.5を達成するには、イーブンペースで1㎞あたり4分58秒のラップタイムを刻まなければなりません。

つまり、最低でも4分58秒/kmで走り続けるだけのスピードがなければ、目標は達成できません。

現時点で4分58秒/㎞のペースがシンドい、もしくは走れないのであれば、筋持久力の強化に加えて、スピード持久力の強化をしていかなければなりません。

具体的には、インターバル走などがスピード持久力強化に有効です。

例えば、2,000m×5本とか1,000m×10本とか、400m×20本とか・・・心肺機能を追い込んだ状態で、いかに比較的短い距離を速いペースで走ることができるかが鍵です。

5,000mを走った際のタイムが21分10秒だと、1㎞あたり4分14秒です。

ですが、1,000m×5本を一定の比較的短い休息期間を設けることで、例えば3分50秒で1,000mを5本こなすことは可能な場合もあります。

距離が400mになれば、より1本あたりのスピードは速くなりますから、スピード持久力の平均値も底上げされます。

スピードトレーニングを実施する

今よりも速く走ろうと考えた時、例えば今は1kmあたりの距離を5分でしか走れないけれど、それを4分で走りたいとしましょう。極端な例かもしれませんが、この人が毎回1kmあたり5分でしか走らなかったとしたら、4分で走れるようにはなりませんよね。

気がついたら4分/kmのペースで走れるようにはならないわけです。

前述のインターバルトレーニングでもスピードのベースを上げることは可能ですが、本数をこなす毎に発揮できるスピードは落ちてきてしまいます。

なので、インターバルトレーニングよりもセット館の休息を長く取りながら、1本1本のランニングの質を高めていくレペティ−ショントレーニングが有効です。

100m、200m、400mといった短い距離で実施していきます。

仮に5分/kmペースでしか走れないランナーでも、距離を短くすることで高いスピードを出すことが可能です。

ですが、筋肉や関節に大きな負荷がかかってしまうので、高負荷のトレーニングに耐えきれるだけのフィジカルを持っていることが前提になります。

ジョギングを取り入れながら、有酸素能力全体を高める

目標達成に向けて、日々トレーニングを重ねていくわけですが、毎回毎回筋肉や心肺機能に大きな負荷をかけなければならないのか?というと、決してそうではありません。

負荷をかけることがなければ成長することはできませんが、毎日毎日ハードトレーニングを積み重ねていると、オーバートレーニングに陥りかねません。

特に市民ランナーであれば、身体を酷使してまでマラソンに取り組む理由も無いでしょうから、日々のコンディション管理が重要になってきます。

トレーニングの頻度や中身は、読者の皆さんのライフスタイルやワークスタイルによって変わってきます。

多くの本には、週に6日走ることがある種推奨されているわけですが(記録を求める場合)、サブ3.5を達成するには週に6日の練習が必要という前提だと、チャレンジの敷居が高くなってしまうので、ご自身のライフスタイルの中でいかに目標を達成していくか「考える力」が必要になってくるでしょう。

例えば週に4回の練習をすると仮定して、4回全てがハードなトレーニングだと疲労が抜け切れないまま次のトレーニングを行うことになりかねません。

ですから、筋持久力、スピード持久力を意識的に向上させるトレーニング以外は、有酸素能力を落とさない・維持するためにジョギング(ジョグ)を取り入れることも重要です。

3ヶ月スパンで期分けをして、各トレーニングを組み合わせる

筋持久力、スピード持久力、有酸素能力を高めるトレーニングを理解できたら、次にそれぞれのトレーニングを組み合わせ、3ヶ月間の計画を立てます。

マラソンに限らず、スポーツのトレーニングシーンではピリオダイゼーションと言って、トレーニングの期分けを行います。

期分け=しっかりと期間を分けてトレーニングをしましょう、ということです。

参考記事:マラソンで怪我なく速く走るために必要な「ピリオダイゼーション」という考え方

筋トレでも期分けが必要なのですが、マラソンも考え方は同じです。

例えば、3ヶ月間でトレーニング計画を立てる場合には、1ヶ月目でマラソンの基礎を作る(準備期)、レースに向けてトレーニングの質と量をアップさせる(鍛錬期)、レースで最高のパフォーマンスを出すための(調整期)のような感じで、目的に応じてトレーニングプログラムをデザインしていきます。

期間が6ヶ月であれば、準備期を2ヶ月、鍛錬期を3ヶ月、残り1ヶ月を調整期のような感じにすることができます。

こうしなければならないという答えはありませんが、各期でどんな目的を持たせてトレーニングするのかは重要です。

仮に、3ヶ月間、毎週全く同じプログラムを続けていると、どこかで能力の向上が頭打ちになり、トレーニングそのものも単調になってしまいます。

ですから、3ヶ月で能力の向上を行うとともに、本番で最高のパフォーマンスが発揮できるようにメリハリをつけながら計画を立てていく必要があるわけです。

例えば、201●年1月30日がレース本番で、本番までの3ヶ月間を

10月30日〜11月27日までを準備期、11月28日〜1月11日までを鍛錬期、1月12日〜1月30日(調整期)として計画を立てます。

そして何より、毎日の数値計測が大切です。数値化できるものは全て数字として落とし込みます。

なぜなら、どこをどう改善したら良いのかが、数字として把握できるからです。

まとめ

練習計画を立てる事自体に正解・不正解はありません。

練習を積む中で、目標とのギャップが思ったほど埋まっていない・・・ということも多々あります。

大切なのは、計画を立てる段階で完璧を求めないことです。

計画に完璧を求めてしまうと、計画が狂ってしまった時に修正ができなくなってしまいます。

なので、計画は必ず修正が入るものだという前提で立てることが大切です。

※修正ありきで適当に作るというわけではありません。計画はしっかり立てますが、修正は許容範囲として考える。ということです。

その中で、いかに目標達成に向けた修正案・修正計画を出せるかが、また重要です。

全体計画の中で、小さなトライアンドエラーを繰り返しながら、目標達成に向けて努力をしていきましょう。