【ピッチ走法 vs ストライド走法】ランニングにおけるケイデンスと共に考える!

ランニングやマラソンで今よりも速く走る、ケガをしないように走る、効率良く走る・・・といった時に、「果たして理想的なランニングフォームはどんなフォームなのか?」と思ったことはないでしょうか?

できることなら速く・効率良く走り、ケガはしたくない!と誰もが思うはずです。ランニングフォームの現状把握から、改善のアプローチは人によって様々です。

ですが、今より速く・効率良く、ケガせず走るには「ピッチ走法が良いのか?」それとも「ストライド走法が良いのか?」という疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?

※「ピッチ」は単位時間あたりの歩数、「ストライド」とは1歩の長さ(歩幅)を指します。

そこで今回はピッチ走法とストライド走法の違い、メリットやデメリットなどについて考えていきましょう。

そして、ピッチ走法・ストライド走法について考える上で重要となる「ケイデンス(1分間あたりの足の回転数)」についても見ていきましょう。

ピッチ走法 vs ストライド走法

ピッチ走法が良いか?ストライド走法が良いか?と問われると、どちらが理にかなっているでしょうか?どちらが良いかを考える前に、そもそもランニングで今より速く走るのであれば、下記の公式は一度頭に入れておかなければなりません。

仮にピッチを1分間あたりの足の回転数として考えると、

ピッチ×ストライド=1分間での走行距離

となります。

つまり、速く走るにはピッチ、ストライドの両方を高めていく必要があるということです。

なので、そもそもの話、ピッチもストライドも、どちらも重要な要素になりますが、ピッチ数に重きを置くとピッチ走法となり、ストライドを広げることに重きを置くとストライド走法になるという理解で、まずは大丈夫です。

では次に、ピッチ走法とストライド走法の違い、メリットやデメリットについて考えてみましょう。

ピッチ走法と、そのメリット・デメリット

ピッチ走法の場合は、ストレイド走法に比べると、単位時間あたりの歩数が多くなります。

特に長い距離を走る場合には、身体へのダメージも少なくなりますが、逆に短い距離を速く走ろうと思うと、足の回転数を上げるしかなくなるので、うまく対応できません。

例えば、筋力がなかったり、柔軟性がなかったりすると、必然的にピッチ数でカバーするしかないわけです。

ストライド走法と、そのメリット・デメリット

ストライド走法の場合は、ピッチ走法に比べて、1歩の歩幅が大きくなります。歩幅を大きくするには、それに見合う筋力や柔軟性が必要となります。

なので、無理にストライド走法に変えようと思っても、余計な力を使って走らなければならないため、ランニング効率は落ちてしまいます。

ただし、ランニング中のストライドが伸びれば、それだけ前に進むことになりますので、仮にピッチ数が同じであるなら、ストライドが伸びれば速く走ることが可能というわけです。

ピッチ走法もストライド走法も、両者にメリットとデメリットがあります。

ですが、基本的にはピッチ走法の方が、ランニングパフォーマンス的にもケガの予防や改善の観点からも有益であるという論文は多数掲載されています。

例えば、2009年のMedicine & Science in Sports & Exerciseに掲載された論文によると、ランニング中のストライド幅を10%減少させたほうが脛骨疲労骨折のリスクを抑えることが可能でであるとの見解を示しています。

さらに、前述した「ケイデンス」という数値を見ていくと、今より速く・効率良く、ケガせず走るヒントが見えてきます。

ケイデンスとは?

ケイデンスは1分間あたりの足の回転数(ステップ数)のことを指します。

ケイデンスはSteps Per Minute:SPMとして計測されます。

ランニングスピードの影響を受けますが、トップランナーの場合は、ランニングスピードも速くなるため、ケイデンスの数値も高くなります(10,000mの世界記録26分17秒を持つ、エチオピアのベケレが、あるレースで10,000mを27分2秒で走った時のラスト200mのケイデンスは215 spmだった)。

一方、初心者ランナーの場合は150〜170 spmに収まるとも言われています。

基本的にGPSウォッチを活用すれば、ケイデンスは自動的に計測してくれるので、便利です。

参考:ランニングウォッチ・GPSウォッチのおすすめを徹底比較【最新版】

ケイデンスを計測することの意味

では、なぜケイデンスを計測しなければならないのでしょうか?

ケイデンスを知り、改善していくことはランニングのパフォーマンスを向上させるだけでなく、ケガの予防や改善にも効果があります。

トレーニングによりケイデンスが上がれば、速く走れるようになったことが分かります。

一方、ランニング時の着地がヒールコンタクト(踵接地)になってしまっていたり、オーバーストライド(歩幅が過度に大きくなってしまうこと)の場合は、ケガのリスクが高くなってしまいます。

ヒールコンタクトの場合もオーバーストライドの場合も、ブレーキをかけながら走ることになり、身体に過度なストレスがかかると共に、ランニング効率的にもよくありません。
※ブレーキをかけながらアクセルを踏んでいる状態。

ケイデンスが160spm以下の場合は、オーバーストライドが疑われます。と同時に、ランニング中の身体の上下動も大きくなる傾向にあるわけです。

つまり、ケイデンスが低いと、ケガのリスクも高くなってしまいます。

2011年のMedicine & Science in Sports & Exerciseに掲載された論文によると、ケイデンスの増加によって、ランニング中の股関節および膝関節への負担を大幅に減らすことができ、ランニング障害の予防や改善に効果があると結論付けています。

ランナーにとって理想的なケイデンスの数値とは?

では、ケイデンスを計測・評価する上で指標となるような数値はあるのでしょうか?

残念ながら、すべての人にとって理想的なケイデンスの数値ははありません。

ランニングのリズムには個人差がにありますし、 ケイデンスの決定要因には身長、股関節の柔軟性、全体的な筋力レベルなど、様々な要因が絡んできます。

ですが、一般的にケイデンスは180 spm以上を維持することが提唱されています。ただし、この180 spmという数字には注意が必要です。

180 spmという数字はどこから来たのか?

コーチとして有名なジャックダニエルスが、1984年のオリンピックの時に46人のエリートランナーのケイデンスを計測したそうです。その時、1人のランナーを除く45人のケイデンスが180 spm以上だったと言われています。
※1名のケイデンスは176 spmだったようです。

これがケイデンスの基準になりました。また彼は大学生のコーチングを20年続けてきた中で、誰一人180 spm以上で走ったランナーはいなかったとも言っています。

なので、必ずしも180 spm以上のケイデンスを目指す必要はないわけです。

ケイデンスの改善に必要なこと

では、何を目安にすれば良いのでしょうか?

目安としてはあなたの現在のケイデンスを知り、その数値をもとに5〜10%の向上を目指します。 たとえば、あなたの現在のケイデンスが160 spmであるなら、目標は168spm以上となります。

ですが、最初から目標とする数値に変更しようとするのではなく、毎週1〜2回だけ増やすか、各回のランニング中にに少しの間だけ増やすようにします。

例えば、10kmのランニングのうち1kmだけケイデンスを意識して走る等。

ランニングマシンでの練習なら、安定したスピードを設定することができるので、ケイデンスのコントロールはしやすくなります。

ただし、そもそものランニングフォームに問題がある場合は、ケイデンスの改善よりもフォームの改善に着手しましょう。

例えば、ランニング中に背中が丸くなっている場合に、ケイデンスを改善しようとしても、背中が丸くなったまま走っていることには変わりません。

また、ランニング中に意識的に足の回転数を上げるのではなく、プライオメトリクス(イメージとして分かりやすいのは、縄跳びのようなエクササイズ)を含んだ筋力トレーニングや安全な場所で裸足で走ってみる、などの対策が必要となります。

まとめ

ここまで、ピッチ走法・ストライド走法を切り口に、ケイデンスの意味や役割について考えてきました。ピッチ走法やストライド走法といった言葉は厳密な定義はありません。

ですが、ケイデンスを見ていくと、ランニングパフォーマンスを改善するためのヒントが隠れていることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

同時に、ケイデンスを見ていくことがケガの予防・改善とも関連があることもご理解いただけたのではないかと思います。

ランニングのパフォーマンスを上げる場合でも、ランニングで起きるケガの予防や改善を考える場合でも、ケイデンスつまり足の回転数を上げることは重要になってきます。

もちろん、闇雲に足の回転数を上げようとしても、かえってぎこちないランニングフォームになってしまうだけです。

なので、ランニングのトレーニング以前に、まずはランニングフォーム(そもそもの走り方)の改善をしていく必要があります。

ぜひ、練習やレースを問わず、定期的にケイデンスのチェックもしてみて下さい。