【ランニングシューズのインソール】選ぶ際の注意点を徹底解説!
ランナーにとって、ランニングやマラソンに取り組む上で欠かせないアイテムの1つにランニングシューズがあります。
例えば、フルマラソンを走る場合、仮にあなたの1歩のストライドが1mだとすると、約4万2,000回、足は地面にコンタクトをする機会があるわけです。
着地動作が下手だったり、ランニング動作中、毎回特定の部位に過剰なストレスがかかってしまうと、怪我に繋がってしまいます。
そもそも、偏平足のランナーやプロネーションの強い足をしたランナーは、怪我との不安と日々戦っています。
実際に怪我をしたランナーもいらっしゃるでしょう。
多くのランナーの間でも、インソールが足のトラブルを解決してくれる手段だという認識はあるようです。
ただ、具体的にどんなメリットがあるのか?ということは、あまり知られていません。
むしろ、私たちはまだインソールの可能性を過小評価しているかもしれません。
市場には色んなインソールのメーカーが存在していて、どのメーカーのインソールを選べば良いのか分からない、どんな違いがあるのかも分からないといった状況です。
インソール自体が優れたアイテムと言うよりも、自分の足にフィットすることで始めて力を発揮してくれるものだと筆者自身は考えています。
つまり、自分の足に合わないインソールを使っても意味が無いということです。
様々な疑問点・不明点があるインソールについて探っていくために、今回ランニングとインソールをテーマに、大阪・守口に本社を構えるU2株式会社の宇津俊昭社長にお話を伺ってきました。
目次
ランニングシューズのみで問題を解決することの限界
現在の靴業界は、本当にシューズをオーダーで作れる人が少ないのが現状で、基本的にシューズは0.5cm刻みでサイズが変わってきますが、プロの方の場合は0.25cm刻みで作っていきます。問題は、一般消費者がランニングシューズを選ぼうとすると、左右が必ず同じサイズになるということです。
右が26.5cmなら左も必ず26.5cmのシューズしか購入できない。基本的に人の足は左右で長さも幅も違いますから、どちらかのランニングシューズが合わなくなってしまいます。
大きさ以外にもバランスという問題もあります。例えば、右足は体重が足の外側にかかっていて、左足は踵側にあるなど。
そうなると、シューズ自体が合わなくなります。大きさは合っているけど、シューズ自体は足に合っていないということです。
例えば、これは当たり前になりますが、右足よりも左足の方が大きいのであれば、大きい左足に合わせてシューズを購入することになりますよね。そうすると、右足に関しては自分の足よりも大きいシューズを履くことになります。
この右足のギャップを埋めるための役割が、インソールにはあるということです。
なので、シューズだけだと限界がありますし、インソールだけでも限界があります。
インソールに合ったランニングシューズを選ぶ
多くのランナーがインソールを選ぶ場合、まずはランニングシューズを選び、次に購入したランニングシューズに合ったインソールを装着しているはずです。
ですが、理想を言うと「まずは自分に合ったインソールを作り、インソールに合ったランニングシューズを選ぶべき。」
いくら良いシューズがあってもインソールがダメだと、そのシューズの特性は活かせませんし、いくらインソールがフィットしていてもシューズが合っていなければ、履いている人からすれば気持ちのいいものではないわけです。
昔はインソールの値段のほうがシューズの値段よりも高いじゃないか、と言われた時期がありました。
ですが、それは当たり前なんです。
まずはインソールがあって、そのインソールに合ったシューズを選びに行って下さい!ということを最初は馬鹿にされながらもお客さんに対し、徹底していました。
今はその活動が認められて、リピーターの方はインソールに合ったシューズを選びに行ってくれています。
インソールがシューズに合う・合わないという点に関しては、事前にある程度、どんなシューズにインソールを入れたいのかをカウンセリングします。
ただ、シューズに最初から入っているインソールが外れないものに関しては、その上からインソールを入れることはシューズの構造上無理なんです。そうでなければ、シューズにインソールを合わせることは可能です。
プロ選手の場合はメーカーとの契約の問題もありますから、シューズに対して合うインソールを1つ1つ作っていかなければならないケースも出てきます。それはそれで良い経験になりました。
インソールは「身体の一部」であって、使い捨てのものではありませんから、身体に付いているものとして使ってもらえればと思っています。
オーダーインソールは存在しない!?
オーダーインソールと謳っている会社の中で、本当にオーダーで作っているところはほとんどありません。形状を取って、その形状をインソールで再現するのはそんなに簡単ではないんです。
例えば、スポンジ状のパッドに足を乗せて、足型をとるタイプのものがあります。それをインソールにしようとすると、実は技術的に難しい。当社の場合は3D工作マシン(CNCマシン)で読み込んで、削り出すわけですが、その機械はインソールを作るためだけに購入するには高すぎて採算が合いません。ソフトの開発から機械と測定器だけで億以上のお金がかかってしまいます。
インソールの値段一足あたりで計算していくと、何足販売しないとペイできないか・・・ということを考えると、基本的に他社さんはやらないと思います。大手の会社さんがやろうとしないのは、採算性なんです。
おおよそ他の会社のオーダーインソールはパターン化されたもので、「セミオーダー」という感じになります。例えば、ハイアーチの人にはハイアーチ用のインソールを、偏平足の人には偏平足用のインソールをお渡しします。セミオーダーのものは、左右が対象のインソールなので、左右差に対応ができません。
基本的に人間の足には左右差がありますが、インソールを作る上で最も大事なのは踵からアーチまでの距離です。ですが、その距離ですら微妙に違ってきます。なので、左右それぞれの癖をカバーできるインソールが必要になります。
他には、職人さんにその場でインソールを作ってもらえるものもありますが、職人さんの技術によっても出来栄えが変わってきますし、何より同じインソールを再現性を持って何度も作ることはできません。
左右のバランスをみながらインソールを改善する
例えば、左右で測定器に乗って足型を計測した際に、左だけ外側に重心が偏っていたとします。そうすると、一般的には左の外側のソール部分に厚みを持たせるなどして、重心位置を元に戻そうとするわけです。
もちろん左足だけで見ればバランスが取れるようになったかもしれませんが、左足のインソール外側部分を修正することで、その影響は必ず右足にも出てきます。一般的には片足ずつコントロールしていくので、ベストなインソールを作ることができないんです。
当社の場合は測定した際の両足の形状とバランスを計測しています。先程のように左足をインソールで修正しようとすると、自動的に右足の重心位置を捉えて、インソールに反映することができます。
前後・左右、両足のバランスを均等にすることで、世界に1つしか無いインソールを作ることが可能なのです。
インソールでランニングパフォーマンスがアップする!
新潟医療福祉大学の研究では、13名の健常大学生を対象にトレッドミル(ランニングマシン)で運動負荷試験(段階的に運動強度を上げていき、呼気を採取)を行ったところ、インソールの表面素材(プッシュバック材)により無酸素性作業閾値に到達するまでの時間が短縮したとの報告がされています。
※無酸素性作業閾値とは、「運動の強さを高くしていく際に、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、呼気量や血液中の乳酸が急激に増加し始める強度の値」。
つまり、インソールだけでなく、インソールの「素材」が重要であることが上記研究から明らかになっています。プッシュバック材によって、ランニング中の酸素消費量を抑えることができ、より少ない酸素でランニングができるので、いわゆる省エネ走法が可能です。また、乳酸が一気に溜まり始めるポイントを遅らせることができるので、より長い時間高いパフォーマンスが維持できるということになります。
また、別の研究では、インソールの素材にプッシュバック材を使用することで、ランニング中の踵への衝撃が緩和されるとの報告もされていますので、怪我を予防しながら長時間楽にランニングができるようになるでしょう。
※プッシュバック材はU2が開発した表面素材。
「職人としての技」を「汎用性ある技術」へ
※U2のインソールを使用することで、時間の経過に伴い本来の重心の位置まで変化してくる
野球の例になってしまいますが、ピッチャーであれば、投球動作の時にできるだけ筋力を使わない状態で立ちたい、キャッチャーであればできるだけ速く立ちたい、内野手であれば、腰が落ちるインソールを作りたいなど。本当に様々な要望が寄せられます。
その1つ1つに徹底的に向き合い、気が遠くなるような作業でしたが、最終的に良い物ができました。理屈も分かった上で。
もし、自分だけが食べていければ良いのであれば、職人としての技を提供していけばいいと思います。
ですが、自分だけの技にしてしまうと社会に価値を残すことができませんし、会社としても成長できません。なので、様々な分析をした上で「職人としての技」を「汎用性ある技術」に転化させていきたい。
そうすれば、私以外の人もできるようになる。それが仕事だと思っています。
それと、他社さんは基本的にインソールという商品を販売していますが、私たちが販売しているのは「技術力」だと思っています。インソールがここまでできるし、ここまでお付き合いする、ここまで徹底的にやれる、というのを示していきたいですね。
「インソールってこんなとこまでできるんですか!?」と言われているうちはダメだと思っています。「インソールなんてこれくらいしかできない」と思われているわけですから。ですが、選手からの一見、無理難題に見えるどんな要望にも応えていくつもりですし、これまでもそうしてきました。時間はかかってしまいますが。
もちろん、野球選手だけにいいものではなくて、その経験を活かして、科学的根拠も踏まえてランナーの方や、一般の方向けにも落とし込んでいる最中です。
編集後記
今回はランニングシューズとインソールについて記事コンテンツをお届けしましたが、いかがだったでしょうか?
現在に至るまでにプロ選手からの様々な要望を満たしながら、汎用性ある技術にまで落とし込んできた宇津社長だからこそ語れる、貴重なインタビューコンテンツになったのではないかと思っています。
筆者自身もオーダーメイドのインソールを使わせていただいていますが、ジョグのペースがインソールの有無で1㎞あたりのペースが3秒〜5秒は違います。
着地の際にうまく衝撃を吸収しながら、次の一歩に向けて反発力を生み出す感じが快適なランニングライフをサポートします。
これまで、ランニング用のインソールが良いのは分かってるんだけど、具体的なメリットが分からなかった方も、怪我はしないからインソールなんて関係ないという考えを持っていた方も、今回のインタビューで「インソールが持っているポテンシャル」を感じていただけたのではないでしょうか?
インソールによって疲れが軽減できる、より速く走れるという科学的な根拠も出てきている中で、ぜひあなただけのインソールを作ってみてはいかがでしょうか?
インソールであれば何でも良いのかと言うと、決してそんなことはなく、できる限り自分の足に合ったカスタマイズされたインソールであることが理想です。
既成品はあくまで「一般化」されていますので、足は一人一人特徴が全く異なります。
またカスタマイズと言っても、「どうカスタマイズされているのか?」というのが重要であり、制作される際はU2製インソールのように現場での試行錯誤と科学・テクノロジーの力を持った会社に依頼すると良いでしょう。
今回の記事コンテンツが、あなたの参考になれば幸いです。