マラソンのトレーニングにLSDは必要なのか?

マラソンのトレーニングと言っても、人それぞれ様々な考え方、方法論が存在します。
マラソンで今よりも速く走りたいと考えた時に、毎回同じようなトレーニングをしていても、必ずどこかで成長は頭打ちに。
速く走れるようになりたい一心で、毎回インターバル走やタイムトライアルのようにオールアウト(疲労困憊状態)まで追い込むトレーニングを続けていると、オーバートレーニングや怪我の原因にもなってしまいます。
では、毎回ゆっくり走っていれば良いのか?というと、それも話が違ってくるわけです。
残念ながら、自身の目標を達成するために、どうトレーニングを組んでいけば良いのか?という問いに対して、正解や黄金の方程式は存在しません。
ですが、ランナーのほとんどは自身を進化・成長させるべく、日々試行錯誤しているわけです。
とは言うものの、市民ランナーは競技アスリートと違い、多くの時間をトレーニングに費やすことはできません。
「いかに効率よくトレーニングを積んでいくか?」は大きなテーマです。
ランニングの効率化を意識するランナーの中には、果たしてLSD(Long Slow Distance)はやった方が良いのか?という疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?
LSDは必要か否か、という議論が持ち上がることは多々あります。
そこで、今回はマラソンのトレーニングに関することの中で、LSDについて考えていきたいと思います。
LSD(Long Slow Distance)とは?
そもそもLSDとは、Long Slow Distanceの略であり、文字通り長くゆっくりと走るトレーニングのことを指します。
ジョギングとは何が違うの?という疑問を持たれている方も少なくないはずです。
LSDは明確な距離は定義されておらず、ペースも個人差が大きく、7分/km=LSDといった定義もできません。
「会話をしながら」でも走ることのできる運動強度と捉えておくのが良いでしょう。
ジャック・ダニエルズの「イージーランニング」の運動強度的に言うと、最大心拍数の65〜78%。最大心拍が200bpmであれば、130〜156bpmということになります。
LSDの目的・効果
LSDの目的は筋肉の有酸素能力の向上であり、マラソンのパフォーマンスアップを目指す場合、脂肪燃焼効果を狙う場合のどちらにも適応できるトレーニングです。
LSDを行うことで、ミトコンドリアの増加を促進し、筋肉の毛細血管の数を増加させます。
※ミトコンドリアは生物の細胞に含まれている、エネルギーを作る器官です。ミトコンドリアは酸素を使って、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー源を作っています。
LSDの効果を語る上で、特に重要なポイントは「エネルギー源として脂質の利用率を向上させる」ことにあります。
ランニングに限った話ではありませんが、運動をするとエネルギーを消費します(もちろん、運動中以外もエネルギーを消費します)。運動や日常生活の中でエネルギーを消費しているため、お腹も減るわけです。
では、私たちのエネルギー源となるのは何なのか?というと、基本的には糖質と脂質です。
糖質は体内にグリコーゲンとして、脂質は体脂肪として蓄えられています。
強度の高いランニングを行うと、グリコーゲンの利用率が脂肪の利用率に比べて上がってしまいます。
ですが、体内に貯蔵できるグリコーゲンの量は脂肪の量に比べて限られています。
なので、私たちはできるだけグリコーゲンよりも脂肪を燃焼させることで、走るエネルギーを得たいわけです。
※体内のグリコーゲン貯蔵量が枯渇してしまうと、脂肪だけではエネルギー代謝が機能しなくなります。
マラソンでは走る時間が長くなるほど、多くのエネルギーを消費します。
なので、出来る限り体内に蓄えられているグリコーゲンの利用を抑え、脂肪をエネルギー源として活用できたほうが、マラソンのパフォーマンス向上にもダイエットにも効果があるわけです。