「心拍ベルトを装着せずに」胸部で心拍数を計測する画期的な方法!
今や多くのランナー、サイクリスト、トライアスリートがトレーニングやレース中に「心拍数」を計測しています。
従来であれば、胸部に心拍ベルトを装着し、GPSウォッチと連携させながら心拍数を計測しなければなりませんでした。
ですが最近では、ほとんどのGPSウォッチに、光学心拍計という手首で脈拍を感知する機能が搭載されています。
光学心拍計は心拍ベルトに比べると、どうしても精度は落ちてしまいます。ですが、簡易的かつ手軽に心拍数を把握できるようになったわけです。
参考記事:ランニング中の心拍数は心拍ベルトで測る?手首で測る?
特に私たちランナーがランニング中の心拍数を計測しようとした時には、心拍ベルトを使用するか、簡易的に光学心拍計で計測するかを選択する必要がありました。今までは!
ですが最近、胸部に心拍センサーを「貼る」という第3の選択肢が生まれました。
それを可能にしたのが、貼る心拍センサーパッド”AIRFIT“。
京都にある会社が手がけたメイド・イン・ジャパンの製品です。
そこで今回は、貼る心拍センサーパッドAIRFITの開発者である、株式会社プロキダイの柴田和明さんにお話を伺ってきました。
目次
AIRFITとは?
AIRFITは心拍センサーというわけではなく、この記事を書いている時点ではセンサーを貼るためのパッドのことを指します。
胸部の皮膚上にパッドを貼り付けた状態で、現状は他社(ガーミン、ポラール、Wahooなど)の心拍センサーを使って心拍数を計測します。
使用できる心拍センサーはオフィシャルサイトからご確認いただけます。
※サイト内が英語表記なのは、もともと海外向けに商品を開発していたからとのこと。
先ほど「現状は」と書いたのは、現在独自の心拍センサーをも開発し、ほぼ完成しているそうです。
AIRFITを使用することで、ランニング中の呼吸も楽になり、胸部をベルトで締め付けることなく、ストレスフリーで精度の高い心拍計測が可能になります。
胸部にパッド(AIRFIT)を貼り付け、ボタン部分にセンサーを取り付けます。
GPSウォッチやスマートフォンと接続することで、アクティビティ中の心拍数をモニタリングすることが可能です。
AIRFITのアイデアが製品になるまで
開発者の柴田さんはもともと、レース用自動車のエンジンを開発する会社や、車両製作に関する会社でエンジニアとして働いていました。
レース用マシンが高いパフォーマンスが出せるように、様々な環境に応じて設計・マネジメントをする仕事や、今までにない商品を作って提案をする、といった仕事をされていました。
当時から趣味でマラソンやランニングをしていたそうなんですが、どうしても心拍ベルトが窮屈だったり、緩んでしまって正確に心拍数が計測できない・・・という課題を感じていたそうです。
代わりとなる商品を探したそうですが、当時世の中には存在しなかった。
「代わりとなるものが無いなら作ろう!」ということで、ものづくりに関わる数多くの経験をもとに、試作品作りをスタート。
試行錯誤しながら、改良を進めていきました。
知り合いのプロサイクリストの方にテストしてもらう中で、製品の評判が非常に良かったため、本格的に商品化を考えるようになったそうです。
時には電極部分の製作を依頼していた会社に、特許だけが取られてしまい、開発が全くできなくなってしまったことも。
それでも諦めることができず、自身で特許を取得。
はじめは生体用電極という医療用に近いものを作る知識や技術もなかったため、全て勉強して身体に害のない心電位を取れるような製品を作りはじめました。
2年以上の時を経て、貼る心拍センサーパッドとしてサイクリストを中心に、高いパフォーマンスを発揮するための必須アイテムとして愛用されています。
現在もスイム用の商品を開発したり、心拍センサーそのものを開発したりと、アスリートやスポーツ愛好家にとって最良の「こだわり抜いた製品」を開発されています。
医療系の大学や、企業系の開発依頼も非常に多いそうです。
AIRFITの使い方と実際の使用感
今回は、同社で開発している心拍センサー(試作品)をお借りして、ガーミンのGPSウォッチと接続しながらランニングをしてみました。
特に冬場の乾燥した季節は装着する電極部分が乾燥していると、うまく心拍数を拾わないこともあるので、付属でレスポンスアップゲルが付いています。
AIRFITの装着部位は心臓の周りであれば、基本的にはどこでもOK。
腕振りなどの動作をしてみて、最も違和感の少ない場所に装着すると良いそうです。
上記のグラフのように、ガーミンの心拍センサーではなくても、ガーミンコネクト(ガーミンのGPSウォッチに付随するソフトウェア)上で、心拍数のデータを確認できます。
※心拍センサー+AIRFITを胸部に装着するとこんな感じに。
目安としては、毎日使って2〜3ヶ月。週2〜3回程度であれば、半年程度で寿命が来るそうです。
オススメの活用法としては、強度の高いポイント練習(インターバル走など)やレース時にAIRFITを使い、普段のジョギングなどの時は心拍ベルトや光学心拍計で計測するという使い方です。
特にフルマラソンやそれ以上の距離を走るウルトラマラソン、トレイルランニングでは、出来るだけストレスがない状態の方が走りに集中できます。
時間と共に心拍ベルトの締め付けが気になったり、逆に緩さが気になったり・・・ということをあります。なので、走りに集中したい時はAIRFITを活用するといいのではないかと。
装着には一手間かかりますが、レース前の儀式としてモチベーションや集中力を高めることにも、繋がるかもしれません。
編集後記
今回はAIRFITの開発者である、株式会社プロキダイの柴田和明さんと様々なお話をさせていただきました。
単に心拍ベルトを簡略化した商品を作る!というわけではなく、アスリートやスポーツ愛好家にとって、最良の「こだわり抜いた製品」を開発されているのが印象的でした。
例えば、冬場の乾燥やアトピー性皮膚炎を持った人のために、レスポンスアップゲルという医療系のゲルを使い、精度と安全性・快適性を追求しています。パッドを貼り付けるためのテープもアメリカから取り寄せた医療用のものだそうです。
「日本のトップ選手や海外で活躍するアスリートが毎日使っても、高いパフォーマンスが出せて、肌荒れしない商品を作る」という信念のもと活動されています。
柴田さんをはじめ、スタッフの皆さんが日本のものづくり精神で日々進化をし続けます。現状の製品にとどまらず、今後の商品開発にも目が離せません。