ランニングフォーム改善のために必要なこととは?着地の方法から走り方を考えてみた結果・・・

あなたがランニングやマラソンをされている方であれば、今より速く走りたい、もっと長い距離を楽に走りたい、怪我をしない走り方はないだろうか・・・などなど、ランニングフォームや走り方に関して、何かしらの悩みや願望があるのではないでしょうか?

ランニングは同じ動作を何度も何度も繰り返すわけですから、ちょっとした動きの「悪い癖」が怪我に繋がったり、パフォーマンスとしてマイナスの要因に繋がったりもするわけです。もちろん、無駄のないランニングフォームはパフォーマンスにプラスの要因となります。

ランニング動作は同じことを何度も何度も繰り返し、全身の関節や筋肉が連動させながら、スムーズに動くことによって成立します。

例えば、足の着地の方法という部分的な動作も、ランニング動作全体の流れの中で決まってきます。

普段、踵から着地をする人は、良くも悪くも、そういう身体の使い方をしているということです。

着地の方法という切り口で考えてみても、足の踵から着地をするヒールストライクがいいのか、足全体をフラットに着地させるミッドフットがいいのか、足の前側から着地をするフォアフットが良いのか・・・色んな視点や考え方がありますよね。

ランニングフォームという全体の動作を考える上で、本来であれば「着地の方法だけ」をあれこれ考えてもあまり良くはありません。

ですが、ランニング動作は各関節の複雑な動きが絡み合っているので、どこをどう修正すれば良いのか、全体的に見てしまうと非常に難しいところです。

そこで、今回はランニングフォームの中でも、前述したランニング中の「着地の方法」に注目して、研究報告等も踏まえて考察してみたいと思います。

正しいランニングフォームとは?

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まず始めに考えたいのは、そもそも「正しいランニングフォーム」は存在するのか?という話。

何を持って正しいとするのかは、非常に難しいところです。速く走れることをよしとするのか、怪我をしないようなランニングフォームが正しいとされるのか・・・。

トップランナーの走りが本当に正しい走りなのか、ゆっくりジョギングする人がトップランナーと同じ走り方を参考にする必要があるのか・・・。

着地の方法を3つの種類(ヒールストライク、ミッドフット、フォアフット)に分けてご紹介しましたが、果たしてどの着地方法が正しいのか・・・。

実は、一概に「こうしなければならない!」というものはありません。

なぜなら、あなたが掲げる目標やランニングをする目的によって変わってくるからです。

また冒頭でお話しましたが、着地の方法は一連のランニング動作の中で自然と決まってきます。

なので、以下にご紹介する内容を「べき論」で捉えるのではなく、そして意識的に変えようとするのではなく、ランニングフォームを考える上での「参考」にしていただければ幸いです。

ランニング動作を分析してみる

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では上記を踏まえた上で、着地方法の各論に入る前にランニング動作(足の動き)を考えてみましょう。

ランニング動作は常に片足立ち(片足着地)の連続動作です。

左右どちらかの足に着目すると、ランニング動作は「立脚期」「遊脚期」の2つのフェーズに分けることができます。

要は足が地面に着いているフェーズと地面から離れているフェーズですね。

立脚期をもう少し分類すると、着地初期(foot strike)立脚中期(mid support)、離地期(take off)の3つに分けることができます(上記写真の左足に注目)。

着地初期・・・足の一部が地面に着いた瞬間

立脚中期・・・一度地面に着いた足の踵が地面から離れるまで

離地期・・・踵が地面から離れてから、最後につま先が地面から離れるまで

遊脚期も立脚期同様にフォロースルー期、フォワードスイング期、フットディセント期の3つのフェーズに分けることができます(上記写真の右足に注目)。

フォロースルー期・・・つま先が地面から離れてから、足が最後方に引かれるまで

フォワードスイング期・・・足が最後方に引かれた後、前方に向かってスイングされる期間

フットディセント期・・・足が前方に向かってスイングされてから、足が地面に接地する直前まで

ランニング中はこれらの動きが繰り返し繰り返し、行われていくのです。

ランニング動作に関する詳細は、参考記事ランニングフォームの分析法〜走り方の問題点を明確にするために〜の中でも解説していますので、ご覧ください・

それぞれのフェーズの中で、今回は着地初期(foot strike)をテーマにお話していくことになります。

着地方法が議論されるようになった背景

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ランニングと言えば、踵から着地をする!そう誰もが今まで疑いもしなかったことが、覆されるようになった2つのキッカケ・・・。

1つは書籍 Born To Run。日本でも多くのランナーが読んでいる、ランニングに関するバイブルと言ってもいい本です。

もう1つがNHKで放送された、あるドキュメンタリー番組。医科学の分野ではもう少し前から議論されていたはずですが、やはりメディアの力は非常に大きい。

NHKのドキュメンタリー番組(ミラクルボディ マラソン最 強軍団,2012 年 7 月 16 日放送)で,ケニア人長距離トップ選手の前足部(つま先)着地の優位性について調査を行い,国立スポーツ科学センターのラボテストで,ケニアの Patrick Makau および日本の山本亮選手(佐川急便,2012 ロンドン五輪マラソン代表)の走動作における着地方法と地面からの衝撃の強さに関する実験が行われました。

その結果,山本選手が踵付近で着地するのに対し、Makau は前足部外側付近で着地をしており,また,踵着地では地面から体重の 2.2 倍の衝撃を受けるのに対し,前足部着地では体重の 1.6 倍の衝撃であり,筋電計のデータより前足部着地が省エネ走行につながっていることを明らかにしました。

この実験結果と、放送がランニング中の着地動作の議論を加熱させた!と言っても良いでしょう。

では、本当に私たちは前足部接地(フォアフット)でのランニングを取り入れるべきなのでしょうか?

ヒールストライク、ミッドフット、フォアフット、それぞれの着地動作を見ていきましょう。

3種類の着地方法

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ヒールストライク

ヒールストライクとは、いわゆる踵から着地をする方法のことを指します。科学技術が進歩する前のランニング動作と言えば、踵から着地をして、つま先で蹴って前に進ことが当たり前だったわけです。

日本時の場合は今でも、多くのランナーの方がヒールストライクで走っていると言っていいでしょう。

この着地法の特徴は、地面からの衝撃(地面反力)を利用しながら、前への推進力を得て走る方法です。

なので、地面反力に耐えうる筋力が必要になります。

極端に足を前方に降り出し、踵から着地してしまうと、推進力に対してブレーキをかけてしまうことになりますので、注意が必要です。

ミッドフット

足の裏全体で着地をする方法のことを指します。

足の裏全体で着地することの利点としては、ふくらはぎの筋肉など小さな筋肉ではなく、お尻の筋肉を使って走ることができます。足の裏全体で衝撃を吸収することができるのも特徴です。

また、ランニング中の上下動が少なくなるので、エネルギーロスが少なくなります。

スムーズな平行移動ができるということです。

ランニング中の振り出し足を重心の真下に落とすことで、足全体での接地に近づけることができます。

フォアフット

足の前足部から着地する方法のことを指します。

前足部から接地するほうが踵から接地する場合に比べて、下半身の筋肉へのダメージが少ないことが特徴です。

前述のケニア人ランナー、マカウ選手もフォアフットで着地をしているようです。

前足部接地の方が接地時間が短くなります。筋肉へのダメージが少なくなることも確認されています。

理想論を言うのであれば、前足部からの着地を繰り返し、筋肉への負担を少なくする。そうすることで、より長く、そして楽に走ることができると言えます。

ただし、注意すべき点は2つ。アフリカのエリートランナーは前足部接地を意識して走っていたのではなく、小さい頃からの生活習慣等が影響していて、結果的に前足部接地になっている可能性が高いということが1つ。

もう1つは、走るペースによってランニング動作は異なるため、ランニング動作全体を考慮した方がいいという点。

これらに関しても、十分理解しておく必要があります。

どういう着地をすればいいのか?

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上記項目の中で、ヒールストライク、ミッドフット、フォアフットと3つの着地方法をご紹介してきました。

では、私たちはいったいどのような着地方法を選ぶと良いのでしょうか?

繰り返しになりますが、着地の方法は意図的に行わないかぎりはランニングフォーム全体の動きの中で決まってきます。

なので、着地方法だけをフォアフットに変えようろすると、当然身体に無理がかかります。

フォアフットで走れる人は、それなりの走り方、ランニングフォームをしているということです、

なので、どういう着地をすればいいのか?との問いに対する答えは、あなたが自然に走れるランニングフォームに身を委ねる。ということになります。

ヒールストライクを意識する必要もなければ、ミッドフット、フォアフットを意識する必要もないということです。

それじゃあ、着地法を議論する意味が無いじゃないか!と言われそうですが、ポイントはランニング動作の中で動きを修正しようとするのではなく、修正するための機会を別途作らなければなりません

なぜなら、ランニング動作全体で見ようとすると様々な関節が複雑に絡み合っているため、修正が難しい。

なので、それぞれ強化したり修正するポイントを動きの中から抽出して、トレーニングをしていかなければなりません。

流れとしては、

①ランニング動作を分解する(例えば、立脚期、遊脚期、その中の各フェーズなどなど)。

②分解したものの中から弱点となるポイントを強化していく(例えば、ランニング動作中に常に上半身が反った状態で走ってる場合は、腹筋や体幹の筋力が弱くなっている可能性が高いので、積極的に強化していく等)。

③個々の動きをランニング動作全体の動きに繋げていく(例えば、いわゆる腹筋運動で腹筋を強化しただけであれば、筋力は確かに付いたのかもしれませんが、ランニング動作中に腹筋が機能するかどうかは別問題ということ)。

ランニングフォームを修正する前に考えたいこと

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ランニングフォームは複合的な身体動作なので、ちょっと意識を変えただけで、そう簡単に変わるものではありません。

もちろん、一時的に変えることは可能です。ですが、一時的に変えただけなので、普段通りに走ればランニングフォームは元のままになってしまいます。

なので、もしランニングフォームに問題があるのであれば、問題のあるランニングフォームになってしまっている「原因」を見つけてあげる必要があるわけです。

更に、自分自身の身体的な弱点が実際のランニングフォームには現れていない、というケースだってあり得ます。

どういう事かというと、一見すると、ランニングフォーム自体はある程度きれいに走れている場合。それでも、どこかの関節や筋肉に痛みや違和感が出ているとしましょう。

見た目上のランニングフォームには問題は見当たらないのに、ある筋肉の柔軟性に大きな左右差があった時、柔軟性の左右差が怪我に繋がっているという場合もあるわけです。

なので、単にランニング中に怪我をしてしまう=ランニングフォームが悪い

とだけ決めつけるのではなく、この場合は「怪我に繋がっている本当の原因は何か?」を見つけて、対処していく必要があるということです。

ですが、仮に股関節の動きが悪いのが原因だよね!となった場合にも、ランニングフォーム中に動きの悪い股関節を意識的に動かそうとすると、それはそれで問題です。

大事なのは、ランニングフォームという複雑な動きの中で色んな評価や修正・改善をしていくよりも、より単純な動作の中で筋力や柔軟性、身体の使い方を見ていく必要もあります。

まとめ

以上、ここまでランニングフォームと着地の方法に関して書いてきましたが、いかがだったでしょうか?

ランニングフォームを変える、着地の仕方を変えるというと、「意識的に変えればいいのでは!?」と思っている方も多いかもしれません。

事実、多くの指導現場ではもっと腕を振りましょう!背筋を伸ばして、猫背にならないように走りましょう!もっとピッチを上げて走りましょう!という意識の改善を促す指導ばかりです。

意識することは良くない!とは言いません。ですが、何回も何回も同じ動作を繰り返す中で、ずっと意識をしっぱなしで走ることは難しいわけです。42.195㎞、着地を意識しながら走る・・・背筋を伸ばすことに意識を向けながら走る・・・恐らく無理です。

なので、理想を言うと、ランニング動作中に無意識レベルで動きが修正された状態を作る。そのためには個別にトレーニングなど、取り組んでいくしかないわけです。

筋肉が使えていないところに関してはステップ・バイ・ステップでランニング動作中も使える状態にしていかなければなりません。

同様に、筋肉や関節が硬くなってしまっているところに関しては、個別に動きを出していきながら、最終的にランニングフォームの改善に繋げていかなければならないということです。