ランニングで怪我をしてから再開するまでに必要な全てのこと
日本臨床スポーツ医学会では、ランニング障害(骨・関節・筋の障害)は走行距離が長くなるほど高率になる。との見解を示しており、一般的に障害を予防するためには平均の一日走行距離を中学生では5~10km(月間200km)、高校生は15km(月間400km)、 大学・実業団で30km(月間700 km)にとどめることが望ましい。尚、中高年ランナーでは加齢により腰痛・膝痛が出現しやすいので、メディカルチェックを受けると共に月間走行距離を200km以内に止めることが望ましい。との提言を行っています。
※日本臨床スポーツ医学会誌: Vol. 13 Suppl., 2005. 「骨・関節のランニング障害に対しての提言」より、一部抜粋。
もちろん、走行距離が多いことが、全て怪我に繋がるわけではなく、走路に関する問題、ランニングシューズの問題、そもそもの筋力や関節の柔軟性などの問題などが複雑に絡み合っているはずです。
ですが、ランニングを含めて何らかのスポーツ・身体活動を行う場合は、常に怪我のリスクを背負っていることになり、どれだけ怪我の予防をしたとしても100%怪我の予防をすることができません。
なぜなら、不意に足首を捻挫してしまうこともあるかもしれませんし、自身の足が前を走るランナーと接触してしまい、転倒することだってあり得るからです。
怪我の予防策を講じた上でも尚、怪我をしてしまうリスクは少なからず残ってしまうわけですが、更に多くのランナーを悩ませるのが、ランニングを再開しても、また怪我をして走れなくなってしまうのではないか・・・という恐怖心です。
仮に怪我をしてしまったとしても、できるだけ早期に怪我を治し、再発のリスクを抑えてランニングを再開したいですよね?
そこで今回は「ランニングで怪我をしてから再開するまでに必要な全てのこと」をテーマに、怪我からランニング再開までに必要なことを1つずつ解説していきたいと思います。
目次
怪我には2種類ある
「怪我」をもう少し細かく分類すると、「外傷」と「障害」に分けることができます。
外傷とは、捻挫や肉離れ、脱臼、骨折などのように、身体に大きな力が加わり怪我をしてしまうもの。一方、障害とは、腸脛靭帯炎、アキレス腱炎、などのように身体に小さなストレスが何度も加わることで、痛みとして発症する怪我のことを指します。
ランニングの場合は、ほとんどが後者であり、外傷となる程の大きなストレスはかかりにくいのが特徴です。
とは言うものの、ちょっとした段差や不整地で足首を捻挫してしまうこともあるので、外傷がないわけではありません。
応急処置をする
いずれにしても、ランニング中に怪我をしてしまった場合は、怪我によるダメージを最小限に食い止めなければなりません。
例えば、ランニング中に足首を内側に捻るような捻挫をした時、外くるぶしの靭帯が損傷してしまいます。因みに、捻挫とは靭帯の損傷であり、靭帯が伸ばされたものだけでなく、部分損傷や完全に靭帯が断裂してしまっても、捻挫です。怪我の度合いは違っても、「捻挫」ということになります。
損傷の程度にもよりますが、足首を捻挫すると足首が腫れる場合が多くあります。腫れが出てしまうこと自体は仕方がないのですが、腫れをそのままの状態にしておくと、傷ついた靭帯のまわりの組織にまで悪影響を及ぼします。
なので、できる限り腫れを抑えて元気な組織まで無駄死にさせないようにすることが大切です。
そこで必要になるのが応急処置の1つであるRICE処置です。Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ってRICE処置と言われています。
怪我をしたらアイシングしましょう!ということは一般的になりつつあり、既にあなたもご存知かもしれません。それだけではなく、腫れを広げないためには圧迫も必要です。最後の挙上は怪我した部位を心臓より高く上げる事で、怪我した部位への血液の流れを抑えるためです。
捻挫で足首が腫れた後に、放置するだけでなく、お風呂にゆっくり浸かる、ビール(アルコール)を飲むなど、血液の流れを促す行為をしてしまうと腫れが拡がり、回復が遅くなってしまうので注意が必要です。
整形外科を受診する
では、応急処置ができていれば大丈夫なのか?というと、決してそういうわけではありません。前述の足首の捻挫を例に話を進めると、怪我をした時に「足首を捻った」という事実はあっても、それが本当に「捻挫」なのかどうかは、素人の目では分からないからです。
足首を捻って、靭帯を損傷した時に骨が剥がれてしまっていたら、それは「剥離骨折」ということになります。
当然、治療プロセスも変わってきます。
なので、怪我をしてしまったら自分で判断するのではなく、整形外科を受診しましょう。整体ではなく、整骨院でもなく、整形外科です。整形外科医というお医者さんがいるところですね。
そこで怪我の状態がどうなっているのか、レントゲン等も含めて診断して貰う必要があります。
治療・リハビリ・トレーニング
整形外科にただ行っただけでは怪我は治りません。かと言って、治るまで安静にしておくのも問題です。骨折をしているのに患部を動かすのは問題ですが、動かせるのであれば治療とリハビリやトレーニングをしていかなければなりません。
その前に考えなければならないのは、「なぜその怪我をしてしまったのか?」「怪我をしてしまった原因は何なのか?」ということです。不慮の事故という場合は別ですが、怪我をしてしまうということは何らかの原因があるから怪我をしてしまうわけです。
「障害」の場合は特に、です。同じ動作を何度も繰り返すことで起きる怪我は柔軟性や筋力、身体の使い方に問題があるために起こります。
治療やリハビリの前に、その原因(問題)を突き止めておきましょう。問題が分かっていれば、自ずと解決策は決まってきます。
ですが、怪我をしてしまっても痛みがなくなれば、すぐにランニングをスタートさせてしまう人も少なくありません。
もちろん、痛みが無いことは非常に大切です。
ですが、足首の捻挫を例に考えてみると、捻挫をすることでお尻の筋肉の筋力低下が起きることは研究上明らかであり、捻挫の再発を恐れるあまり、ランニング時につま先が外を向きながら着地をしてしまう人もいるわけです。
ちょっとしたランニング動作の乱れが、他の怪我を引き起こす場合だって十分にあり得ます。
なので、そうならないためにも患部のリハビリやトレーニング、そして患部以外のトレーニングは必要不可欠です。
多くの場合、患部の痛みがなくなればそれでいい!というわけにはいきません。残念ながら。
リハビリ・トレーニングの流れ
では、怪我をしたらどんなリハビリや治療をすればいいのでしょうか?もちろん、怪我によって実施するリハビリやトレーニングは変わります。怪我の程度によっても変わりますし、もともとの身体的特徴によっても変わってきます。
なので、ここでは具体的なリハビリやトレーニングの中身は紹介できません。
ですが、怪我をした箇所は当然動きが悪くなっていますし、怪我をした箇所に関わる筋力は確実に低下しています。
リハビリを実施する段階では、最初に患部を温めることで動きやすい状態を作ってあげます。考え方としては、運動前のウォーミングアップと同じです。ですが、怪我をしていては、動かしながら筋肉の温度を上げることは困難です。そこで、受動的に筋肉や関節を温めて、動かしやすい状態を作ってあげます。そして、リハビリを実施した後では患部が再び炎症したり、怪我の悪化を防ぐためにアイシングを実施することになります。運動後のクーリングダウンと同じです。
つまり、怪我をした後のリハビリやトレーンングでは、患部を温める→リハビリ・トレーニング→患部の冷却(アイシング)という流れで実施する必要があります。
オススメのセルフケア・アイテム
ただし、毎回氷を作って患部をアイシングするのも手間がかかりますし、患部を温めるとなると湯船に浸かる以外に一般的な方法がありません。
かと言って、毎回治療院に通い、治療とリハビリを実施するのも現実的ではありません。なので、「セルフケア」ができるアイテムが必要になります。
そこで、ご紹介するオススメのアイテムがCALDERA(カルデラ)というアイテムです。
これは1つのアイテムでアイシングと温熱の両方を実施することができます。
ジェル状のパックを冷凍庫に1時間程度入れておけば、アイシングができますし、温める場合も電子レンジ(500Wまたは600W)を使い、1分~1分30秒程度で使用することができます。ただし、ジェルパックが凍っている場合は、室温に戻してから温めてください。
1つのジェルパックだけで冷却と温熱の両方が可能です。
まだまだアメリカなどの欧米諸国に比べると、日本におけるセルフケアの実施状況は低いままです。ですが、長くランニングを継続していくためには、自分自身で身体のコンディションを整えていく事が必要不可欠になってきます。怪我に対する活用はもちろん、肩こりや眼精疲労などにも活用できるアイテムなので、非常に重宝するアイテムです。
実際の使用方法は動画で解説してみましたので、下記を御覧ください。