Polar(ポラール)の Vantage Vが新たに搭載した次世代のランニングウォッチ機能とは?

今や多くのランナーがトレーニングやレースで計測している「心拍数」。

ランニングに限らず、スマートウィッチに代表される様々なデバイスを通じて、運動中や日常生活における心拍計測は当たり前になってきたと言っていいでしょう。

今では様々なメーカーがありますが、フィンランドで創業され、心拍トレーニングに関する製品のリーディングカンパニーとして有名なのが、Polar(ポラール)です。

ポラールは2018年11月8日に新たなマルチスポーツウォッチ(フラッグシップモデル)をリリースしました。

今回は、ポラールのマルチスポーツウォッチであるVantage Vについて、特徴や使用感などをご紹介していきます。

※この記事はPolar(ポラール)エレクトロ・ジャパンの取材をもとに制作しています。

Polar(ポラール)Vantage Vに搭載されている3つの大きな特徴

ランニングパワー

2016年から海外では話題になっているランニングパワー。

日本のランナーの間では認知度こそありませんが、次のランニングサイエンス分野のトレンドになると個人的には考えています。

通常、ランニングパワーを計測する場合はランニングウォッチ以外の外部センサー(加速度センサーが搭載されたフットポッドや心拍ベルトなど)が必要です。

StrydやRunscribe、ガーミンのランニングダイナミクスポッドなどが外部センサーにあたります。

ですが、Vantage Vはそれらの外部センサーを使うことなく、時計内でランニングパワーが計測できるデバイスです。

どのようにランニング時のパワーを計測しているのか?と言うと、Vantage Vの場合は加速度センサーではなく、GPSの情報と気圧高度計による情報によって算出するそうです。

つまり、どれくらいのスピードで走っていて、どれくらい登ったり降ったりしているか?という情報からランニングパワーを算出しています。

外部センサーが必要ない分、今までよりも手軽にランニングパワーを計測できますが、インドアランニングやGPSが捕捉できない(トンネル内など)箇所ではパワーは計測できないとのことです。

ランニングパワーについては、一言で解説ができないので、下記の記事内で解説をしています。

参考記事:ランニングのパワートレーニングで得られる5つのメリット

ペースや心拍数といった指標と合わせて、パワーを活用することで、ランニングパフォーマンスを向上させることができます。

次世代の光学式心拍計~Polar Precision Prime

次の大きな特徴は「光学心拍計」です。今ではほとんどのランニングウォッチ・GPSウォッチメーカーが光学式心拍計を搭載したモデルをリリースしています。

光学式心拍計とは、時計本体の裏側にあるセンサーから手首の脈を感知し、心拍数として数値を出しています。

以前は胸部に心拍ベルトを装着する必要がありましたが、光学式心拍計測機能はベルトなしでも運動中の心拍数を把握できる機能です。

今では心拍ベルトで計測する値と遜色ない精度で計測することができますが、時計と皮膚との接触や手首の動き、血液循環などによって、心拍ベルトと同じレベルで計測するのは難しいというのが現状です。

光学心拍計は各メーカーでセンサーの精度が様々です。

つまり、光学心拍センサーはどこも同じではないということです。

ポラールのVantage Vでは①2色9LED採用センサー②接触型センサー③3D加速度センサーという3つの異なる技術を使ったセンサーによって、光学心拍計測の精度を高めています。

心拍計測のリーディングカンパニーとして、他のメーカーの数歩先を行くスペックを搭載しています。

2色9LED採用センサー

VantageVには2色の9LEDを採用した光学式センサーを搭載。

皮膚や組織への光の透過率は、波長の長さによって変わると言われています。

通常は1色(緑色)のLEDで脈拍を感知していますが、赤のLEDを加えることで、さらに深い層の血流を検知することが可能です。

緑と赤という波長の異なる2色のLEDを組み合わせることで、今までよりも精度の高い光学式心拍センサーを実現しました。

接触型センサー

光学式心拍センサーは時計と皮膚が接触することで、脈拍を感知します。

今回、 Vantage Vに搭載された接触型センサーは、時計が皮膚に接しているかどうかを検出して、心拍計測の精度を向上させています。

時計の裏側に4つの接触型センサーがあり、その接触具合から、皮膚とセンサーが密着しているか、隙間があるかを判断します。

隙間があると、反射してきた光の減衰が起こり、ノイズも増えます。

このような状況に合わせて補正を変えることで、より正確な数値を把握することができます。
※4つの接触型センサーに反応がなければ、外れていると判断し、心拍計測は自動で止まります。

3D加速度センサー

光学式心拍計は時計と手首の皮膚部分の接触が悪いと、うまく機能しません。

前述の接触型センサーに加えて、ランニング中の腕振りによる時計のズレを補正し、心拍計測の精度を高めてくれるのが、3D加速度センサーです。

特にランニングスピードが上がると、時計のズレも大きくなりやすいので、Vantage Vに搭載されている加速度センサーが、どの方向にどの程度動いたのかを察知して、補正してくれます。

なので、通常の光学式センサーよりも高い精度での計測を実現できるのです。

最大40時間のバッテリー容量

最後の大きな特徴は、長時間のバッテリー容量(GPSの取得間隔が1秒で最大40時間稼働)があるということです。

特にウルトラマラソンに参加するランナーや、アイアンマンレースに参加するトライアスリートには嬉しい機能なのではないでしょうか?

もちろん、使い方によってはバッテリーの稼働時間は短くなりますが、それでもGPSの取得間隔が1秒で30時間以上の持続力は現時点で驚異的です。

他のGPSウォッチメーカーであれば、最大20時間台といったところでしょう。

もちろん、取得間隔を数秒〜60秒まで伸ばすと、バッテリーの稼働時間は大きく伸びます。

ですが、距離計測の精度が極端に落ちてしまうので、実際に使用されている方は多くないのではないでしょうか?

最大40時間の稼働時間があれば、ほとんどのレースやイベントでGPS情報を取得しながら(しかも高い精度を維持したまま)走ることができるわけです。

トレーニング負荷とリカバリーに関する機能

前述の3つの機能の他に、Vantage Vにはもう一つ、特徴的な機能があります。

トレーニング負荷ProリカバリーProという機能です。

ランニングパフォーマンスを向上させるには、どんなトレーニングをどの程度の量・強度で実施するか?

ということも大事ですが、どの程度の回復期間を設けるか?も考えなくてはなりません。

適切なトレーニングと適切な回復プロセスを経て、パフォーマンスは向上します。

いわゆる、超回復というものですね。

過度なトレーニングを繰り返せば、オーバートレーニングになりますし、トレーニング量や強度が低く、トレーニング頻度が少なければ、体力は向上していきません。

トレーニング負荷Proという機能では、カーディオ負荷(心拍数から算出)、筋肉負荷(ランニングパワーから算出)、自覚的負荷(10段階の主観的・感覚的な負荷として算出)の3つからトレーニングによる負荷の総量を計算し、それらの情報を元にトレーニングを最適化することができます。

リカバリーProという機能では、日々の回復状況(短期)とトレーニングと回復のバランス(長期)を見ながらトレーニング負荷を導き出す機能です。

日々の回復状況をモニタリングするには、H10というポラール社製の心拍ベルトを使った起立試験を行う必要がありますが、より自分に合ったトレーニングを実施していきたいランナーにはオススメの機能です。

起立試験に関してはポラールのウエブサイトに詳細が書かれていますので、参考にしてみてください。

Polar(ポラール)Vantage Vのスペック

ではここで、Vantage Vのスペックについて、まとめておきましょう。他社との比較をしやすいように、ランナーズNEXTのフォーマットで紹介したいと思います。

ランニングウォッチ・GPSウォッチを選択する際の判断材料となるものをピックアップして掲載しているつもりです。

<Polar Vantage Vの主なスペック>

■サイズ:幅46×高さ46×奥行き13mm

■重量:68g

■防水機能:30m防水

■画面解像度:240×240ピクセル

■稼働時間

・1日1時間のトレーニング、24時間心拍計測使用で最大1週間
・GPS(高精度:1秒取得)心拍計同時使用で最大40時間

■その他の主な機能

カラータッチディスプレイ採用
→ランニングを含めたアクティビティ実行中は、タッチセンサーがオフになるので、自動的に画面が変わるということはありません。

GPS機能、気圧計機能、ランニングプログラム機能(レース日程を登録するだけで、今までのトレーニング実績や、最近の運動量に基づき、ユーザーに合ったトレーニングプログラムを作成できる機能)、ルートガイダンス機能など。

■標準価格:
¥69,800(税抜)
¥75,800(税抜)※心拍ベルトH10同時購入の場合。

まとめ

今回はPolar(ポラール)のVantage Vというマルチスポーツウォッチについて、機能や使用感をまとめてみました。

個人的に、ランニングウォッチやGPSウォッチの機能については、もうこれ以上付加する箇所はないのでは?と思っていました。

ですが、今回はフットポッドなどの外部センサーを使わずに、時計内でランニングパワーを計測してしまうという機能が搭載され、自分の予測しうる範囲の小ささに気づいたわけです。

今はできないだろうと思うことも、固定観念を捨てて考えると、実現できる可能性はあるということ。

心拍計測についても、光学心拍計の精度は上がっています。

私達は、まだまだテクノロジーの進化による恩恵を受けて、パフォーマンスを上げる可能性を秘めているということです。

もちろん、万人向けのデバイスではないのかもしれません。

ですが、様々なランニングデータをもとにトレーニングをしていきたい!レースに参加したい方!というは、活用を検討してみてはいかがでしょうか?

ちなみに、Polar Vantage Vは2019年3月に行われたアップデートで、日本語表示にも対応しました。

PolarのVantage Vに関するレビューを下記の動画でも紹介しましたので、参考にしてみてください。