ストレッチでパフォーマンスは低下する?ランニング前後に実施したいストレッチの考え方と具体的方法

ランニングやマラソンに限らず、スポーツをする人にとってストレッチは「必要不可欠なもの」として認識されています。
パフォーマンスを上げるため、怪我を予防するため、翌日に疲れを溜めないため等、様々な目的を持って実施されているはずです。
面倒臭くてなかなかストレッチができていない!という人もいると思いますが、中にはランニングの前後にしっかりとストレッチをしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
ストレッチ=やった方がいいことだけど、面倒なもの!というイメージがどうしても強いですが、もしもストレッチをすることでランニングのパフォーマンスが落ちたり、実は怪我を予防することと関係がないとしたらどうでしょうか?
ここ数年の間で、一般的にも静的なストレッチ(数十秒筋肉を伸ばした状態を維持するようなストレッチ)がパフォーマンスにマイナスの影響をおよぼす可能性があること、直接的に怪我を予防できないという報告があることが知られるようになってきました。
ストレッチに関する研究は昔から実施されていましたが、少なくとも10年以上前から静的なストレッチがパフォーマンスにマイナスを影響を与えてしまうのではないか?ということが議論されています。
事実、Kokkonenらが発表したした1998年の研究では、静的なストレッチを実施した後に膝を曲げる筋力測定と、膝を伸ばす筋力測定を行ったところ、それぞれ7.3%減、8.1%の現象が見られたと報告しています。
色んなストレッチに関する研究論文が発表されていますが、その中身を理解せずに、ストレッチ=パフォーマンスにマイナスの影響を及ぼすもの、怪我の予防に効果がないものと決めつけてしまうのはナンセンスです。
ストレッチと言っても色んな種類・目的を持ったストレッチが存在しますし、数十秒筋肉を伸ばした状態を維持するようなものだけがストレッチではありません。
研究結果に関しても、最終的な結果(しかも表面的な結果)だけを見るのではなく、研究の背景・条件などを見ていかないと、間違った判断をしてしまいます。
そこで今回は、ランニング前後に実施したいストレッチの考え方と具体的方法というテーマでストレッチに関する情報の整理と、実際に私達がストレッチの効果を最大限に高めるための方法をご紹介していきます。
目次
研究結果から考えるランニング前後のストレッチ
これまでに行われたストレッチに関する研究をリサーチしていくと、静的なストレッチ前後に実施したパフォーマンステストでは、ストレッチの前後で変化が見られないかパフォーマンスが低下するという報告がほとんどです。
ですが、この情報のみを鵜呑みにしてしまうのも良くありません。
なぜなら、様々な研究で行われている測定項目がランニングと全く異なるからです。
具体的に説明すると、ほとんどの研究で行われているパフォーマンスの測定項目は垂直跳び、もしくは大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏の筋肉)など、単一の筋の最大筋力を計測しています。
確かに、単発かつ非常に大きな筋力発揮が必要な種目の場合、静的なストレッチがパフォーマンスを低下させる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
ですが、ランニングのように長時間かつ様々な関節の動きを伴う動作の時にはどうなのか?疑問が残ります。
では、ランニングのレースの前にストレッチを行い、パフォーマンスの測定すれば良いのではないか?と思うかもしれませんが、ランニングのパフォーマンスをストレッチの有無のみで判断することはできません。
なぜなら、距離が長くなればなる程、ランニングのパフォーマンスはその日の体調に左右されてしまうからです。屋外での測定は風邪や気温など天候に左右されてしまいます。
なので、現段階でランニングの前にストレッチをやった方がいいのか?やらない方が良いのか?という2者択一の判断は非常に難しいということになります。
ですが、静的なストレッチをランニングの前に積極的にやることは、どうやら避けたほうが良さそうです。
但し、どこかの筋肉が硬くなってしまった結果、怪我をしている場合は別です。
静的なストレッチを積極的に実施しないということはどういうことなのか?
ご存知の通り、ストレッチにはいくつかの種類と各種類毎に目的も異なります。
具体的に言うと、自分自身で行えるストレッチの中には静的なストレッチ(スタティックストレッチ)と動的なストレッチ(ダイナミックストレッチ)、反動をつけながら行うバリスティックストレッチがあります。