Zwift Runで「ランニング」をアップデートする!
東京オリンピックに向けて、特に男子のマラソン界は盛り上がりを見せており、代表選考レースとなるMGC(Marathon Grand Championship)終了まで益々目が離せない状況が続いています。
一方、市民ランナー人口の増加は落ち着きを見せつつありますが、「ランニングスタイル」に目を向けてみると、マラソン以外のランニングアクティビティも数多く生まれており、楽しみ方も多様化の一途を辿っているようです。
同様に国内外問わず、ランナーを対象とした様々な商品やサービスが展開されています。
中でも、ランナーズNEXTでは「ランニング×テクノロジー」というテーマで、ランニングをアップデートする企画コンテンツをお届けしていきたいと思っています。
今回は、その第一弾。2014年にアメリカで誕生し、カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く、Zwiftというサービスです。
Zwiftというと、サイクリストには言わずと知れたサービスですが、今回は特にZwift Runというランナー向けのサービスが、どのようにランニングをアップデートしていこうとしているのか?に迫ります。
サービスについてはもちろん、海外のスポーツテック系スタートアップのストーリーは必見です!
目次
2014年に生まれた”Zwift”とは?
Zwiftは、共同創設者Jon Mayfieldのひらめきで誕生しました。
Jonは2010年に初めてバイクを購入すると、すぐにその魅力の虜に。
しかし幼い子供がいた上、仕事などにより時間的制約がある中で、トレーニングの時間を確保することが次第に困難になりました。
この問題を解消するため、トレーナーを購入して屋内でトレーニングに励むようになったのです。
ただ、Jonも多くの人々と同様に、屋内トレーニングが退屈だと感じていました。
そこで、ビデオゲームエンジニアである彼は、より楽しめてよりやる気が湧くように、バーチャルリアリティのトレーニングプラットフォームを構築しようと決心します。
Jonはこの初代プラットフォームを”VRBike Coach”と名付けました。
その後、年月を重ねてプラットフォームは進化・発展していきます。
ある日、Eric Minは偶然にも、SlowtwitchのフォーラムでJonの投稿を見つけたのです。
ちょうどEricはSakonnet Technologyという新規事業を成功させたばかりで、次のビジネスへの構想を模索中でした。
ビジネスパートナーであるAlarik Myrinと実兄Jiのアドバイスもあり、Ericは自らのサイクリングへ の情熱を新規事業に繋げたいと考えていたのです。
その頃、EricもJonと同じように、利便性と時間効率の良さを理由に屋内サイクリングに励んでいました。
ただ、屋内サイクリストに対するサービスが十分ではないと実感しており、ビデオゲームの技術とソーシャルメディアを活用し、フレンドリーかつ競い合うことのできる環境で、人々を繋げたいというビジョンを描いていました。
そして、Jonの構築したプラットフォームを一目見ると、Ericはその翌日に実際にJonに会いに行ったのです。
2人はその場で合意に達し、新会社の発足に動き出しました。
こうして、2014年にZwift が誕生したのです。
このプラットフォームは当初、サイクリングに特化した製品として開発、発表されました。
しかし、そこに至るまで共同創設者の間では「第1弾製品はランニングに特化すべきではないか?」という議論が交わされていたのです。
最終的に、サイクリングの開発技術の方がより進んでいたことを理由に、サイクリングプラットフォームを第1弾として発表しました。
あまり知られてはいませんが、実はZwiftの誕生時からランニングのコンセプトは存在していたのです。
Zwiftが「サービス化」されるまで
これまでZwiftは、自力で新しいものを発見しては一層の発展を遂げる、非常に積極的なコミュニティの恩恵を常に受けてきました。
Zwiftが登場した2014年当時、どうにかコミュニティがZwiftを発見してくれるよう、共同創設者らは固唾を呑んで見守っていました。
Jon Mayfieldは当時を振り返りながら、製品発表までに膨大な時間を費やしたものの、どのようにユーザーを集めるのかについては確信を持てずにい たと語ります。
しかし、ユーザーは増えていきました。
発表から年月を経て、Zwiftは巨大なサ イクリングプラットフォームへと成長したのです。
サイクリングプラットフォームが成長するにつれ、Jonと彼のチームはランニングプラットフォームという当初のコンセプトに立ち戻るようになりました。
そして2016年後半、アイアンマン世界選手権がコナで開催された際、Zwiftではランニング機能がひっそりとデビューを果たしていたのです。
当時のプラットフォームは依然として開発段階にあり、大勢のメンバーが参加するには適していませんでした。
しかし、コミュニティ内の熱心なZwiftファンは、システムを「ハック」し て、ランニングを体験する方法を発見しました。
今年2月に正式発表をするずっと前から、多くの人々がZwiftでランニングに興じてきたのです。
彼らはランニングプラットフォームへの潜入方法を解説する動画をYouTubeにアップして、Facebookでは”Zwift Runners”と呼ばれるグループを立ち上げました。
こうして人々が自発的に集まり、Zwift Runベータ版のテスターグループが結成されたのです。
2017年を通して、Zwiftはランニング機能の開発作業を黙々と続けました。
Jon Mayfieldも新機能を試すために、トレッドミルで数百マイル走り込むなど、膨大な量のテストをこなしました。
2018年2月にはZwift Runの発表準備が整い、ニューヨークでのイベント開催を皮切りに、誰でも参加できるようになりました。
今では誰もが世界中の数千人に及ぶランナーと一緒に、トレッドミルで走ることが可能になっています。
タイプ別Zwift Runの楽しみ方
トライアスリート
トライアスリートの多くは既にZwiftのサービスを活用しているため、他のユーザー層よりも初期段階からZwift Runを利用する可能性かは高いと言えるでしょう。
現状、Zwiftユーザーの約25%がトライアスリートです。仕事とプライベートの合間に3種目のトレーニングに励むトライアスリートにとって、利便性と時間管理は非常に重要。だからこそ、一般的にトライアスリートはトレッドミルの使用傾向が高いのです。
トライアスリートにとって、最も重要な機能は「体系化されたワークアウト」との見解から、私たちはゲーム内のワークアウトのライブラリを構築しています。
今後数ヵ月以内に、ますます多くの ワークアウトが追加されていくでしょう。
さらに、複数のスポーツに対応できるフレキシブルなトレーニングプランも近日中に追加予定です。
トライアスリートは、トレーニングを段階的に進められるよう専門家監修のもと作成された具体的なプランに沿ってワークアウトを行うことができます。
またこのサービスは、トレーニング期間に応じて調整されるよう設計されています。
最後にコーチングを受けたアスリートたちは、サイクリングと同様にTraining PeaksやToday’s Planとトレーニングスケジュールを直接同期させることが可能です。
ランナー
一言でランナーと言っても「ランナー」を特定するのは難しいといえます。 なぜなら、ランナーだと自負するのはもっぱら競技に出場するようなユーザー達で、全体の一握りにすぎません。
こうしたランナーは、トライアスリートのユーザー層と同様のモチベー ションを持っています。
通常、彼らがトレッドミルを使用するのは、悪天候の場合や、トラッ ク上よりも簡単に行える特定のスピードトレーニングをする場合です。
そして、このユーザー層にとっても、体系化されたワークアウトがZwift体験の醍醐味となっているのです。
これからもZwiftは楽しく魅力的な製品を提供するだけでなく、真剣にトレーニングに取り組むためのツー ルとしても、ユーザーのニーズを満たしていきます。
一方、ランナーだとは自負しないものの、健康維持のために走るランナーたちは大勢います。
実はこうしたユーザー層も、フルマラソンやハーフマラソンの完走など、前述の「ランナー」と同様の関心や目標を抱えているはずです。
ただ、彼らは後述する「健康とフィットネス 」のユーザー層と共通する部分があります。
健康とフィットネス目的のユーザー
健康とフィットネス目的のユーザーは、Zwiftから多くの恩恵を受けることができます。
トレーニングの観点から、Zwiftのトレーニングプランによって、適切に体系化されたトレーニングのメリットを実感できるでしょう。
Zwiftはまた、自宅でのトレッドミルやジムでのランニングをこれまで以上に楽しくしてくれるツールでもあります。
サイクリングプラットフォームでの体験のように、ユーザーはランのイベ ントに参加することで、実在する世界中の人々と一緒に走ることが可能です。
誰だって他の人と一緒にトレーニングするとモチベーションは上がります。
だからこそ、1つのバーチャルトレー ニング環境に数万人規模のユーザーが集うことのできるZwiftは、他のどこにも存在しないユニークなツールなのです。
Zwift Runは日本市場で受け入れられるのか?
製品戦略をめぐる最終的な決定権は、カリフォルニア州ロングビーチにある本社が有しています。
しかし、Zwiftは世界のさまざまな市場でのローカライズにますます注力しており、Zwiftにとって日本市場が重要だとの考えから、英語のウェブサイトを最初に日本語に翻訳しているという背景があります。
日本国内では、2015年11月に幕張メッセで行われたサイクルモードで正式にお披露目となりました。
これをきっかけに、国内のロードバイクのイベントをスマートトレーナーでの体験をメインにブー ス出展を行い、現在では自転車業界に限らずトライアスロンやフィットネス、ゲームショーなど幅広い分野で活動を行い、2019年はe-sportの分野での活動も行う予定です。
日本は花粉症、梅雨、台風、猛暑、雪などの自然にによる影響が大きく、オンラインゲームを楽しむという国民性からも世界的に見てもユーザー数は常に上位に位置しており、国内のコミュニティーグループも発達してきています。
現在でもトレーニングとしての使い方をしている方々が多く見られますが、外へ行く事なく、自 宅で誰にも見られずに、好きな時間に好きなだけ安全にプレイする事ができることから、最近 はダイエットやフィットネスの目的で使う方が増え、女性の利用も増えてきました。
後期高齢化社会を迎えた日本では、自宅で出来きるという安全面からご年配の方々がトレッドミルとZwiftランを利用してオンライングループウォーキング等の利用も増えてくるのではないかと考えています。
しかし、一方でZwift Runの導入を考えた時に、日本の家の広さは諸外国と比べると非常に狭く、自宅にトレッドミ ルを置くことは非常に難しいのが現状です。
なので、ジムでのプレイ機会がほとんどだとは思いますが、その場合はジムの会員利用料を支払いも発生するため、気軽に自宅で始められないという事とから、まだまだ課題は残っています。
Zwiftが目指す未来
Zwiftのミッションは至ってシンプルです。より多くの人を、よりアクティブにしたいのです。
JonやEricのように、多くの人々が忙しい生活の中でトレーニング時間を確保しようと悪戦苦闘しています。
そうした状況で、これからもZwiftは時間効率に優れ、エンターテインメント性の高いトレーニングを提供していきます。
Zwift Runはまだ開発中で日々進化を遂げている製品であり、ユーザーの体験とフィードバッ クを基に常に改良を続けています。
サイクリングと同様、ランニングもまずは無料で発表しました。
最終的にはサイクリングと同じく、有料サービスとなる予定です。
それまでに私たちはZwiftでのランニング体験の向上に注力していきます。
この取り組みの一環として、すでにワトピアとニューヨークのコースにランニング専用のルートを追加しているほか、より多くの人々にZwiftでのランニングを体験してもらうため、Zwift Run Podをリリースしました。
今後は、ハーフマラソンのようなZwiftならではの大規模チャレンジをはじめ、より頻繁にイベントを主催していくことも目指していきます。
また、初めて5Kランに挑むユーザーから、マラソンのトレーニングに励むユーザーまで、あらゆるタイプのランナーにマッチしたトレーニングプランを網羅するライブラリを用意するため、今後もますます多くのプランを加えていく予定です。
さらに、実際のZwift RunユーザーやStephen Cousinsのような有名なZwifterを起用して、ランニングにより特化したコンテンツを作成していきます。