1. TOP
  2. ランニングお役立ち情報
  3. 【書評】2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦!

【書評】2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦!

 2015/12/27 ランニングお役立ち情報
この記事は約 5 分で読めます。 1,961 Views

人類はフルマラソンを2時間以内(サブ2)で走ることが可能なのか?今では多くのマラソンファンがサブ2達成、という快挙を意識をし始めています。

数年前まで、フルマラソンをサブ2で走ることに対して、真剣に考えていた人が果たしてどれくらいいたでしょうか?

フルマラソンのワールドレコードの歴史を紐解いてみると、2時間10分を始めて切ったのがオーストラリアのクレイトン。1967年の福岡国際マラソンでの出来事です。そこから徐々に記録は更新され、2003年にケニアのテルガトがベルリンで2時間5分の壁を破る2時間4分55秒をマーク。

月日は流れ、2007年。エチオピアの皇帝、ハイレ・ゲブレセラシエが同じくベルリンマラソンで2時間46分26秒、翌年の同大会で、2時間4分の壁を破る2時間3分59秒でワールドレコードを更新しています。

ゲブレセラシエはトラックの5,000m、10,000mの絶対王者であり、10,000mでは1993年〜1999年まで世界陸上で4連覇を達成し(世界陸上は2年に1回開催される)、アトランタオリンピック、シドニーオリンピックでも連覇を達成しているスーパーランナーです。

当時、ゲブレセラシエの記録は当面破られることはないのではないかと思ったほどです(トラックでの実績があまりにもインパクトが大きすぎて、彼のスピードに対抗できる者は現れないのではないかと・・・)。

ですが、2011年以降歴史は大きく動き出します。

s_7daf982b※ハイレ・ゲブレセラシエ(右)、ベケレ(中央)、モハメド・ファラー(左)はトラックレースを沸かせた(ファラーは現在も)ランナー達。

当面破られることは無いだろうと思われていた、ゲブレセラシエの記録がケニアのマカウによって更新されます。2時間3分38秒(ベルリン)。

その後も、2013年にケニアのキプサングが2時間3分23秒(ベルリン)、2014年には同じくケニアのデニス・キメットが遂に2時間2分57秒をベルリンマラソンで叩き出しました。

恐らく、マカウがゲブレセラシエの記録を破った辺りから、男子のフルマラソンで2時間を切ることが可能なのかどうかの議論が生理学者の間だけでなく、マラソンファンの間でも話題になり始めたのではないでしょうか。

フルマラソンで2時間が切れるのか?残念ながら、現段階では日本人ランナーの手の届く数字ではありません。
※日本の男子マラソンはトップ50人に1人も入っていません。50人の内訳はケニア人が27人、エチオピア人が23人で上位を独占しています。

このように、可能性があるとしたら、ケニアかエチオピアを含めた東アフリカの国からサブ2が出るのではないか?と誰もが予想するはずです。

では、なぜアフリカの選手が、これほどまでに強いのか?

高地で生まれ育ったから、もともと心肺機能が違う。幼少期から走ることが生活の一部だったから。マラソン向きの体格だから。私達の想像の範囲では色んな考えが浮かびます。

ですが、詳細はあまり知られていません。

そんな中、近所の書店でたまたま、ある一冊の本と出会いました。

それが、イギリスの若手ジャーナリストであるエド・シーサの著書、2時間で走る:フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦

2011年にボストン・マラソンで2時間3分2秒(当時の世界最高記録だったにも関わらず、ボストン・マラソンは世界で最も古くから継続して開催されているにも関わらず、世界記録を出せる大会とは位置づけられていない)をマークし、翌年のベルリン・マラソンでも2時間4分15秒をマーク、ワールド・マラソン・メジャーズを2度も制したジョフリー・ムタイの人生を通じて、彼だけでなく偉大な選手たちが育った家庭環境や練習環境などを事細かに紹介しています。

東アフリカのトップランナーは生まれつき競技能力に優れ、順風満帆に競技生活を送っているように表面上は思ってしまいますが、この本を読むと決してそんなことはないと思うはずです。

確かに、身体能力は恵まれているかもしれませんが、それ故の苦労もあるということがハッキリと認識できるはずです。

アフリカでの貧しい生活環境は様々な苦労のホンノ1つに過ぎません。いや、むしろ、高い競技成績を残し、恵まれない生活環境から離れたランナーほど、苦しんでいると言っていいでしょう。

ジョフリー・ムタイを含めた、そんなアフリカ勢ランナーの記録への挑戦と葛藤がリアルに描かれています。

他にも、日本でも活躍したサムエル・ワンジル(仙台育英高校→トヨタ自動車九州)が北京オリンピックで金メダルに輝いた後、なぜ24歳の若さでこの世を去ったのか?

なぜ、ケニア人のトップアスリートは日本で言う軽量化されたレースシューズよりも、靴底に厚みがあり、デザイン用語で言うHTドロップ(踵とつま先の高さの差)が高いものを好むのか?

なぜフルマラソンは、42.195㎞という非常に中途半端な距離なのか?

世界のマラソンの歴史を学びながら、日本にいると想像できない、考えられない世界のマラソンの動きまでを知ることができます。

普段ランニングやマラソンをしている人だけでなく、マラソンを見るのが好きな人にもぜひ読んで欲しい1冊です。

マラソンに関するノウハウが書かれた書籍ではありませんが、世界のマラソンを見る目がきっと変わるはずです。

\ SNSでシェアしよう! /

ランナーズNEXTの注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ランナーズNEXTの人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

ライター紹介 ライター一覧

浦中宏典

浦中宏典

ランナーズNEXT 編集長

株式会社ストレッチサポート 代表取締役
1983年8月12日 長崎県長崎市生まれ

高校卒業後、大学でスポーツ科学(運動生理学・バイオメカニクス)を学び、トレーナーとしてスポーツの世界で実績を積む。

主な活動実績はJR東日本硬式野球部、サントリーサンゴリアス(ラグビー・トップリーグ)、国際テニストーナメント、世界陸上大阪大会、日本大学フェニックス(アメリカンフットボール)他。2011年、サハラマラソンランナーのトレーナーとしてトレーニングと身体のケアを担当。

2011年4月に会社を設立。
テクノロジーの力でスポーツアクティビティを今より楽しくすることで、「もっとチャレンジしたくなる世の中を創る」
ために事業活動を行っている。

2015年4月に開催されたサハラマラソンにランナー兼トレーナーとして出場・完走。
2017年9月にはアメリカ ユタ州を中心に開催されるGrand to Grand Ultra(7日間6ステージ273㎞のレース)に参加し完走を果たす。

鍼灸・あん摩マッサージ指圧師の国家資格者でもあるが、現在はランニングウォッチやパワーメーターなどのデバイスを活用しながら、効率的にマラソンやランニングの目標を達成するためのサポートをしている。

自分自身もマラソンやトレイルランニングの実践者として、常に挑戦を続けている。

<メディア掲載実績>
テレビ NHKまちかど情報室
雑誌 Tarzan(マガジンハウス)
雑誌 トレイルラン2017夏号(山と渓谷社)
新聞 長崎新聞
ラジオ 中央FM
専門誌 月刊トレーニング・ジャーナル 他多数

この人が書いた記事  記事一覧

  • 「才能の正体」から学ぶ、マラソンの才能・能力を伸ばすために必要な考え方【編集長コラムVol.1】

  • 【新企画】編集長コラムがスタートします!

  • Garmin(ガーミン)のアウトドアウォッチInstinct(インスティンクト)機能まとめ

  • 【最新ウェアラブルデバイスHumon Hex】ランニング時にリアルタイムで筋肉中の酸素を計測し、疲労状態を可視化する!

関連記事

  • 走ることが好きになるには感動体験を得続けるしか無い!

  • トレイルランニング用ヘッドライトを選ぶなら様々なシーンに対応できるコレがオススメ!

  • MAURTEN(モルテン)のスポーツドリンクがマラソンの水分補給の常識を変える!

  • 海外のランニングクラブと日本のランニングクラブについて考えよう(オーストラリア・シドニー編)

  • 【最新ウェアラブルデバイスHumon Hex】ランニング時にリアルタイムで筋肉中の酸素を計測し、疲労状態を可視化する!

  • ランナー必見!スポーツサングラスの選び方をプロに聞いてみた!