目標とするレースに向けてのスタートは現状把握をすることから〜ASICS Sports Complex RUNNING TEST〜
これから2020年4月のUltra Trail Mt. Fuji(UTMF)に向けてトレーニングをしていくわけですが、どんな目標であれ、まずは現状を把握することからスタートする必要があります。
なぜなら、現在地が把握できなければ目標との「ギャップ」を認識できないからです。
関連記事:4ヶ月間の低酸素トレーニングで、身体とランニングパフォーマンスはどう変わるのか?【Ultra Trail Mt. Fuji (UTMF)までのストーリー】
ランナーとしての現状を把握するための手段は、専門施設でのラボテスト、屋外で行うフィールドテストを含めていくつか存在します。
今回はASICS Sports Complex TOKYO BAYにて、ASICS Sports Complex RUNNING TEST(以下、ランニングテスト)を実施。
この記事では各テストの詳細、目的などについて紹介していきます。
※実際にラボで実施する順番に紹介。
目次
■足型 Foot shape
様々なフィジカルテストに先駆けて、まずは自身の足型の計測をしていきます。
マラソンやトレイルランニングのレースに限らず、そしてどんなレベルのランナーであれ、ランニングシューズ選びは非常に重要です。
特にフルマラソンや長い距離・時間を要するランニングの場合、シューズが合わないことで、マメや靴ズレ、爪のトラブルを招くリスクは大きくなります。
最悪の場合、怪我に繋がる可能性もあるわけです。
ですが、実際は店頭にてランニングシューズを試し履きした「感覚だけ」で、ランニングシューズを選んでいる!そんな人も多いのではないでしょうか?
足型の計測をすることで、実際の足の長さ、足幅、甲の高さや左右差等、自身の足部を様々な角度から数値として把握することが可能です。
具体的な計測方法は、専用の測定機器で左右の足型を交互にスキャンし、評価していきます。
■脚伸展・屈曲パワー Power of Leg Extension/Flexion
ここ数年の間で、ランナーの持久系能力に関連した計測ができる専門施設は増えてきました。
ですが、一般の市民ランナーが持久系能力と合わせて、脚筋力やパワーを数値計測できる施設は非常に少ないのではないでしょうか?
特にランナーの中でも膝に違和感や痛みを抱えているランナーは、
①脚の筋力そのものが弱い。
②脚筋力に左右差がある。
③脚の伸展筋力(太ももの前面の筋力:大腿四頭筋)と屈曲筋力(太ももの後面の筋力:ハムストリングス)の筋力バランスが悪い。
この中の1つ、もしくは複数が該当しているケースが考えられます。
もちろん、膝の怪我をしていないランナーであっても、その可能性は否定できません。
脚伸展・屈曲パワーを計測することで、太もも前面の筋力、太もも後面の筋力、左右差、前面・後面の筋力バランスを計測し、筋力発揮の癖や弱点を把握することが目的です。
計測方法は計測機器に座った状態で、機器の抵抗に対し、膝の曲げ伸ばしを素早く行なっていきます。
※膝を伸ばす方向に力を発揮する際は、大腿四頭筋の筋力、膝を曲げる方向に力を発揮する際は、ハムストリングスの筋力を評価。
■ランニングスピード/パワー Running Speed/Power
ランニングスピードとパワーの計測は、ランニングマシン上で、自身の体重の50%、70 %、90%の負荷を加えながら、15mに相当する距離を全力で走ります。
この時、左右で最大どれくらいのパワーを発揮しているのか?その時のパワーは何m地点で発揮されているのか?15m疾走中の最高スピードはどれくらいなのか?
それぞれの負荷で算出。
パワー=ランニング中に発揮している力と速度の掛け算です。
つまり、体重あたりの負荷が軽い時の方がパワーを発揮できる人もいれば、逆に負荷が重い時の方がパワーを発揮できる人もいます。
パワーを発揮する際の特徴や癖を把握し、筋力トレーニングでどう変化するのか?体重を落とすことで、パワーがどう変化するのかを定点観測していきます。
マラソンや持久系スポーツという文脈で考えると、より軽い負荷の時に発揮できるパワーを高めることがポイントです。
■ランニングフォーム Running Form
「今よりも楽に走りたい!」「効率的な走り方を身につけたい!」というランナーは多いのではないでしょうか?
ですが、客観的に自身のランニングフォームを評価してもらったことのあるランナーは、まだまだ少ないのが現状です。
ランニングフォーム測定では、身体の側面と後面からランニングフォームを撮影し、動作を「数値化」していきます。
ランニングフォームの評価はどうしても主観的になりがちです。
ランニングテストでは、客観的な数値をもとに、どこが問題なのか?どう改善していけば良いのか?をフィードバックしてくれます。
具体的には、ランニング中のピッチ数、ストライド、上下動の大きさや、体幹の前傾角度、腕の振り幅(どれくらい大きく腕が振れているのか)、股関節の振り幅(どれくらい大きく股関節を動かせているか)、左右のプロネーション角度を数値として算出。
また実際の診断結果に対し、どんなトレーニングを実施すれば良いのか?をシステマティックに提案をしてくれるので、提案をもとにトレーニングを行うことが可能です。
■全身持久力 Anaerobic Threshold
ランニングテストの最後に、全身持久力を計測していきます。
個々のランニングパフォーマンスを最も反映する計測項目です。
このテストでは、無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold:AT値)の把握が最大の目的。
AT値とは簡単に解説すると、有酸素運動から無酸素運動へと移行する、運動強度の転換点のこと。
つまり、AT値が高いということは、それだけ高い運動強度でも乳酸の蓄積を抑えながら長時間のランニングが可能になるということです。
AT値が高い=より高い強度でもランニングスピードを維持できるということ。
具体的な計測方法は、まずランニング中の呼気を分析するために、マスクを着用した状態でテストを実施します。
低速のランニングスピードからスタートし、徐々にランニングスピードを上げていきながら、呼気(酸素と二酸化炭素)の分析を行うわけです。
時間経過と共にランニングスピード(運動強度)を上げていくと、体力的にもシンドくなり、徐々に呼吸も大きく、荒くなってきます。
呼気中に含まれる酸素量の増加に対し、二酸化炭素量の増加が上回ったポイントがAT値です。
AT値に相当する運動強度はそれほど高くないため、安全に測定を行うことができます。
ただし、日頃のトレーニングでは酸素マスクを装着して走るわけではありません。
そこで、AT値に相当するペースと心拍数を算出します。
AT値相当のペースや心拍数が分かれば、日頃のトレーニングでそれらをチェックしながら、運動強度をコントロールすることが可能です。
また、AT値からフルマラソンの予想タイム、ハーフマラソンの予想タイムを算出してくれます。
最大酸素摂取量の計測には、オールアウト(限界)まで身体を追い込む必要があるため、特にランニング初心者の方やランニングで身体を追い込むことに慣れていない方は、無酸素性作業閾値(AT値)を把握しておくだけでも十分です。
■まとめ
ここまで、ASICS Sports ComplexTOKYO BAYにて実施するランニングテストについて紹介してきました。
ランニングテストを通じて、現状の課題や弱点、身体の使い方の癖を理解しておくことで、今後のトレーニングの「方向性」を定めることができます。
特にランナーにとって、AT値を把握し、自身に合った運動強度でトレーニングを行うことは非常に重要です。
また、ロードランニングに比べて、トレイルランニングではより大きな筋力やパワーが求められます。
計測項目にある、脚伸展・屈曲パワー、ランニングスピード/パワーは、特に筋力トレーニングの成果を図る上での客観的な指標にしていくつもりです。
今回は各計測項目の概要について紹介してきましたが、次回の記事の中で、実際の計測結果を踏まえた考察をしていきたいと思います。