約2ヶ月の低酸素トレーニングと筋トレでランニングテストのパフォーマンスはどう変化したのか?

20204月のUltra Trail Mt. FujiUTMF)に向けてASICS Sports Complex TOKYO BAYでトレーニングをスタートしてから約2ヶ月が経過しました。

目標とするレースに向けてのスタートは現状把握をすることから~ASICS Sports Complex RUNNING TESTの中で紹介しましたが、同施設にはランニングパフォーマンスや怪我の予防・改善のために必要なデータを取得できるラボがあります。

私は20191212日に1回目のASICS Sports Complex RUNNING TESTを受け、その後2020228日に2回目のテストを受けました。

今回の記事では、その間(20191213日~2020227日までの間)に行ったトレーニングを踏まえて、2回目のテスト結果がどう変化したのか?について考察を含めて紹介したいと思います。

期分け(ピリオダイゼーション)

実際の結果を見ていく前にお伝えしたいことは、そもそも今回の企画の目的は、

①日々のトレーニングに「低酸素トレーニング」や「筋力トレーニング」を取り入れることで、身体やランニングパフォーマンスがどう変わるのか?をお伝えすること。

②一連のストーリーを通じて、「自分だったら、今回の企画をどう活用できるのか?」をイメージし、実践できるようにすることです。

まず、今回の企画を遂行するにあたり、全4ヶ月のトレーニング期間を大きく2つのフェーズに分けました。

なぜ2つのフェーズで考えたのか?というと、単純に目標とするレースまでに計3回のランニングテストの機会があったからです。

初回のテストから2回目のテストまでを第1フェーズ、2回目から3回目のテストまでを第2フェーズと考えています。

※3回目のテストと、UTMFは同時期となるように設定。

もちろん、目標とするレースまでを2つのフェーズに分けることが正解というわけではありません。もっと細かく分けることも可能です。

トレーニング期間を2つに分けた理由は、「それぞれの仮説に基づいて実施したトレーニングの結果を踏まえて、記事を書いた方が分かりやすいだろう」と思ったからです。

つまり、今回の企画の場合、個人的な完走はあくまでサブの目標であり、レースに至るまでのストーリーを共有し、何らかの形で参考にしてもらうことがメインの目標として定めています。

1フェーズにおける2ヶ月間のトレーニング

では実際に第1フェーズ(約2ヶ月)の期間中、どんなトレーニングをしてきたのか?について、共有をしておきましょう。

まずこの2ヶ月間で意識したポイントは、

①基本的な筋力トレーニングを週2回の頻度で実施。

基本的な筋力トレーニング・・・スクワットやランジ、ベンチプレス等の大筋群を鍛えるトレーニング。

②標高3,000mに該当する低酸素環境で、ランニングマシン上で傾斜をつけてランニングやウォーキングを実施。

という2つを意識してトレーニングを実施しました。普段の食事内容や量を意識して変えることはしていません。

本当は①と②を別々に検証することで、それぞれの効果を見ることができますが、今回は両者を合わせて評価していきます。

今回、なぜ筋力トレーニングや傾斜をつけた状態でランニングやウォーキングを中心にトレーニングをしたのか?

現状、頻繁に山に行けない状況かつ近くに山も坂道もない状況の中で、トレイルランニングに必要な力をつけるために、筋力トレーニングと傾斜をつけた状態でのランニングは自身の課題を解決するために重要ではないか?と考えたからです。

トレイルランニングにおける「登り坂」をどう攻略するのか?は個人としての大きな課題でもあります。

もちろん、11つのトレーニングを振り返ろうとするとかなりの量になってしまうので、ここではランニング時の「運動強度」をもとに考察を深めていきましょう。

ランニング中の「運動強度」の割合をランニングパワーゾーンと心拍ゾーン、ペースゾーンという3つの視点で見た場合、第1フェーズで実施したトレーニングの結果は以下の通りになりました。

ここでは、特に注目して欲しいポイントだけ記載していきます。

パワーゾーン

各月のランニングパワーゾーンを見ると、大半が最も運動強度の低いZone1でランニングを実施していることが分かります。

12月は79.2%1月が88.5%2月に至っては90.4%Zone1でのトレーニングです。

心拍ゾーン

次に心拍ゾーンを見ていきます。パワーゾーンほど極端に低い運動強度でトレーニングをしていたわけではないことが分かります。

同じスピードで走っていても、平地よりも坂道の方が心拍数は上がりやすいですよね。今回は主にランニングマシン上で傾斜をつけた状態でトレーニングをすることが多かったので、心拍数は平地で走るよりも高めになっています。

心拍ゾーンで注目して欲しいポイントは各月でZone5Zone6という強度が高いエリアでランニングをほとんどやっていないこと。

心拍ゾーンはAT心拍数を100%として分けています。Zone5Zone6AT値以上の運動強度です。

つまり、何を言いたいのかというと、「第1フェーズではAT値を越える心拍ゾーンでほとんどランニングができていない」ということをここでは押さえておいて下さい。

ペースゾーン

ペースゾーンも心拍ゾーンと同様に、ATペースを100%として分けています。

Zone5Zone6AT値以上の運動強度です。

心拍数同様に、AT値以上のペースでほとんど走っていないことが分かります。

測定結果と考察

以上を踏まえて、2回目の測定結果と、結果を踏まえた考察をしていきましょう。

1回目の測定結果は「ランニングテスト」でパフォーマンスレベルが明らかに!果たしてその結果は?の中でも紹介しています。

尚、足型(Foot Shape)については1回目のみの計測となっています。

脚伸展・屈曲パワーの変化

脚伸展・屈曲パワーテストでは、太もも前面(大腿四頭筋)の筋力、太もも後面(ハムストリングス)の筋力、左右差、前面・後面の筋力バランスを計測し、筋力発揮の癖や弱点を把握することが目的です。

絶対値筋力を見ると、左右の脚伸展・屈曲筋力共に向上しているのが分かります。

右膝を伸ばす筋力が大きく向上し、膝を曲げる筋力の左右差が少なくなっているのも特徴です。

1フェーズに関しては、筋力が弱い方の脚を意識して鍛えたわけではなく、左右バランスよく基礎的な筋力トレーニングを行いました。

もともと筋力トレーニングを実施していなかったことも、数値が大きく改善した要因でしょう。

スクワットやランジ、ベンチプレスといった複数の関節を同時に動かすトレーニング(多関節トレーニング)を実施していますが、膝関節という単関節の動作に関係する筋力が向上しています。

ランニング動作は様々な関節や筋肉を複合的に動かしていく必要がありますので、状況にもよりますが、単関節のトレーニングよりも多関節のトレーニングを実施していく方がランニングに必要な筋力を効率よく鍛えることができるわけです。

ランニングスピード/パワーに関する変化

ランニングスピード/パワーテストでは、ランニングマシン上で自身の体重の50%70 %90%の負荷を加えながら、15mに相当する距離を全力で走ります。

女性の場合は40%60%80%の負荷となります。

1回目と2回目の計測では、どちらも体重が同じ(67.4kg)となっています。

結果を見ると、特に体重の70%90%の負荷を与えた時のピーク出力、ピーク速度が共に大きく向上。

ランニングという文脈で考えると、例えば強い向かい風の中でも簡単に押し戻されずに、前方に進む力を発揮できることになります。

体重の50%の負荷を与えた時はピークの出力は若干下がっていますが、ピークは速度ほぼ変わらない値でした。

1フェーズでは基本的な筋力トレーニングがメインでしたので、パワーや神経系のトレーニングを実施したときに、これらの数値がどう変化するのか?を次のフェーズで見ていくつもりです。

ランニングフォームの変化

ランニングフォームのフィードバックはトレッドミル上でのランニング動作を横方向、後方から撮影した映像を通じて確認します。

ランニングフォームに関する結果は、アシックス社で得られた膨大なデータに基づき、自動的に算出。

1回目と2回目は撮影中のランニングスピードが違うので、他の項目が改善したかどうか判断が難しいですが、依然として上下動は大きい傾向にあるとの結果が出ています。

以前から股関節前面の筋肉が硬く、ランニング中の上下動は大きくなる傾向にありましたが、今回のトレーニング期間中に股関節の前面の筋肉を痛めてしまい、ストレッチを控えていたことも改善が見られない一つの要因だと考えています。

尚、筋肉を伸ばさなければ痛みは出なかったので、股関節の前面の筋肉を痛めてからも、ランニングは問題なく実施可能でした。

ランニングフォームについては、別途屋外のランニングデータから評価したいと思っています。

全身持久力の変化

全身持久力テストでは、ランニング中の呼気ガス分析によって、無酸素性作業閾値(AT値)と呼吸性代償閾値(RCT)を測定します。

前回と今回の測定で大きく変わったのはATペースのみ。5/kmから448/kmに向上しています。AT心拍数は前回と今回で1拍違うだけなので、同じ心拍数を維持しながら、速く走れるようになっているわけです。

その他の結果は、ほぼ変わっていません。

ATペースが向上したことで、フルマラソンとハーフマラソンの予想タイムは連動して変化しています。

1フェーズで実施したトレーニングを見ても、AT値を越える強度でトレーニングができていないことから、RCTの向上は難しいことが分かります。

加えて、心拍数やペースをベースにした「閾値走」を実施したわけでもありません。

にも関わらず、ATペースが向上したのはランニング中の運動強度が低くても、低酸素トレーニングで身体に負荷をかけることができたのではないか?と考えることができるのではないでしょうか。

まとめ

ここまで、約2ヶ月間のトレーニングを踏まえて、2回目のランニングテスト結果がどう変化したのか?について紹介をしてきました。

個人的にはテスト結果そのものよりも、「なぜ○○という結果に繋がったのか?」を考える方が重要だと考えています。

なので、簡単ではありますが、今回はトレーニングプロセス(データ)についても言及しました。

できる限り、シンプルにデータを評価したつもりです。ですが、もしかすると人によっては少し内容が難しく感じたところもあったかもしれません。

ただ、1つ言えるのは今回のようなテスト結果であれ、普段のレース結果であれ、その結果に至るまでのトレーニングプロセスをきちんと評価してあげれば、必ず原因は見つかるということです。

2フェーズでは、また新たな仮説を立ててトレーニングを行い、3回目の測定で同様の考察ができればと考えています。