Garmin Enduro(エンデューロ)ウルトラトレイルランナーのためのスマートウォッチ

2021年4月8日にGarmin(ガーミン)から新たなアウトドア用スマートウォッチが発売されました。

それも、ただのアウトドア用スマートウォッチではありません。

ウルトラトレイルランナーのために作られた、スマートウォッチGarmin Enduro(エンデューロ)です。

特に100マイルのトレイルレースを最大限楽しむランナーにとって、「GPSウォッチのバッテリーがレースの途中で切れてしまう」のは悩みの種でした。

ですがEnduroさえあれば、例えゴリゴリの山岳系100マイルレースであっても、最後までGPSウォッチのバッテリーを心配しながら走る必要はありません。

そこで今回はGarmin Enduroを詳しくレビューしていきたいと思います。

※動画でのレビューはこちらをご覧ください。

Garmin Enduroとは?

Garmin EnduroはPower Glass(ソーラー充電レンズ)による、長時間のバッテリー稼働時間(GPS1秒取得で最大80時間のバッテリーライフ)とパフォーマンス機能を兼ね備えた持久系アスリート(特にウルトラトレイルランナー)のために開発されたスマートウォッチです。

これまでfenixシリーズがトレイルランナーやトライアスリートを含めた、持久系アスリートのためのハイエンドモデルでした。

Enduroはfenixシリーズのデザインを引き継ぎながら、よりウルトラトレイルランナーのためを考えた機能を搭載しています。

太陽光を最大限にキャッチする1.4インチの常時オンのディスプレイを採用。走行中でも高い視認性を誇ります。 

Garmin Enduroの機能・スペック

では早速、Ennduroの機能やスペックから見ていきましょう。

Enduroには「スチールタイプ」モデルと「チタンタイプ」モデルの2種類が展開されています(重量や見た目以外の機能・スペックは同じ)。

Enduroの最大の特徴は、何と言っても最大80時間にも及ぶ、超ロングバッテリーです。

GPSの取得頻度が1分間隔で100時間以上のGPSウォッチはありますが、EnduroはGPS1秒取得で最大80時間稼働します。

そして、トレイルランナーに向けた機能も搭載されているのも魅力の1つです。

Enduroの基本スペック

  • サイズ:51 x 51 x 14.9 mm
  • 重量:
    スチール: 71g(ケースのみ 65g)
    チタン: 61g (ケースのみ 55g)
  • レンズ素材:Power Glass
  • 防水機能:10ATM(100m防水)
  • 解像度:280×280ピクセル
  • 稼働時間:
    スマートウォッチモード:約50 日 + 15 日*
    GPS+光学式心拍計モード: 約70 時間 + 10 時間**
    バッテリー最長モード:約200 時間 + 100 時間**
    Expedition モード:約65 日 + 30 日*
    *
    ソーラー充電、50,000 ルクスの条件で1 日3 時間の屋外での使用と終日着用を想定
    **ソーラー充電、50,000 ルクスの条件での使用を想定
  • 販売価格
    スチール:¥ 104,500(税込)
    チタン:¥ 115,500(税込)

Enduroの購入時には、軽量化目的なのかナイロン性のバンドがデフォルトで付いていますが、QuickFit対応なので、簡単にシリコンバンドにも変更することができます。
※シリコンバンドは別途、購入の必要あり。

スマートウォッチ機能

Garmin Enduroはウルトラトレイル向けの機能を充実させたウォッチデバイスですが、日常生活でも活用できるスマートウォッチとしての機能も充実しています。

スマートフォンとの接続による通知機能はもちろん、Garmin Payによるキャッシュレス決済も可能です。

2021年5月現在、主要クレジットカードはVISA、Mastercardでの決済、交通系ICカードはSuicaと紐付けすることができます。

その他、ガーミンデバイスの特徴として、危険を感じたり、時計が事故の発生を検知した場合には、援助要請機能と事故検知機能から緊急連絡先に位置情報が送信される機能も搭載しているので、緊急事態にも備えることが可能です。

尚、Enduroを含めた特定のガーミンデバイスに血中酸素飽和度(SPO2)の計測機能が実装されました。
※ソフトウェアアップデートによる実装です。

Apple Watchを筆頭に、各スマートウォッチで血中酸素飽和度(SPO2)の計測ができるようになっています。

ここに来て、ガーミンでも計測が可能になったわけです。

ランニング中にペースや時間、心拍と一緒にSPO2をモニタリンングできるわけではありませんが、日々の健康チェックの一環で使用すると良いでしょう。

ウルトラトレイルに対応する4つの特徴・機能

では次に、Enduroがウルトラトレイルに特化したデバイスであることを裏付ける4つの特徴・機能について紹介していきます。

ウルトラトレイルに特化した特徴や機能は、「他のデバイスに有りそうで無い」機能ばかりです。

超ロングバッテリー

ウルトラトレイルランナーにとって、これまでのGPSウォッチデバイスの悩みにタネだったのが、「GPSウォッチのバッテリー稼働時間」でした。

マラソンやウルトラマラソン、ミドルレンジ(50km~80km程度)のトレイルであれば、GPSを計測した状態で30~40時間稼働するバッテリーがあれば、山岳系のトレイルレースであろうと十分に対応できます。

ですが、100マイルレースを制限時間一杯か、それに近いところで走るランナーであれば、GPSを計測した状態で40時間以上持続するデバイスが必要です。

単に距離計測するだけであれば、モバイルバッテリー等を使って充電しながら走るのも1つでしょう。

ですが、充電しながら走ると光学心拍計測ができなくなってしまいます。トレイルランニング中に心拍ベルトを装着するのは、特に長時間に及ぶレースでは、かなりのストレスです。

Enduroのように、GPSを計測した状態で70時間(ソーラー充電が機能すれば最大80時間)持続するバッテリーがあれば、どんな100マイルレースであっても、完走するまでバッテリーが持ち堪えてくれるでしょう。

トレイルランVO2max

次の特徴的な機能は「トレイルランVO2max」の予測機能です。

これまでのVO2max予測機能は、あくまでロードランニング時のVO2maxの予測でした。

ですが、トレイルランニングの場合、アップダウンやサーフェス(ロードなのかトレイルなのか)によってランニングパフォーマンスは変わってきます。

EnduroのトレイルランVO2max予測機能では、頻繁に変化する地形下で行うトレイルランのアクティビティでも、より精度の高いVO2maxの予測が可能になりました。

GPSウォッチのパフォーマンス指標は、ランニングスピードと心拍数の関係性から導き出されています(単純に考えると)。

平坦な地形をランニングする場合と比べて、上り坂や下り坂が繰り返されるトレイルランニングでは、ロードランニングと比較して平均化するとペースの割りに心拍数が高くなりがちです。

そうなると、VO2maxの数値はロードランの時と比較して、トレイルランニングではどうしても数値が落ちてしまいがちです。

このような点を踏まえて、Enduroではトレイルランニング中のパフォーマンスを加味したVO2max予測が可能になったわけです。

ただし、EnnduroではこれまでのVO2max予測とトレイルランVO2maxが別々に表示されるわけではなく、「VO2maxの算出方法にトレイルランの要素が加わった」と考えておきましょう。

※Enduroの発売当初「トレイルランVO2max初搭載」ということで、注目が集まりましたが、現在はfenix6シリーズ、ForeAthlete(正確にはForerunner) 245、745、945でもトレイルランVO2max機能がソフトウェアのアップデートによって追加されることが海外で発表されています。

ウルトララン・アクティビティ

ロードランニングとトレイルランニングの違いは沢山あります。そもそも走る地形が異なるわけですが、ロードランニングは基本的に、走りっぱなしです。一方、トレイルランニングは歩いたり、立ち止まったりすることも多いですよね。

レースでもトレイルランニングの場合はエイドステーションでの滞在時間がロードより長くなりがちです。更にウルトラトレイルの場合、仮眠するシーンも出てくるでしょう。

ロードランニングの場合は、ワークアウトもしくはレース全体で得られたデータを平均化して考えても、あまり問題ありません。

例えば、フルマラソンを走った時のタイムが4時間を切ったのなら、「1kmの平均ペースが5分30秒だった」と言えば分かりやすいです。

ですが、トレイルランニングの場合はデータを平均化してもあまり意味がありません。

データが平均化されると、休憩中やエイドステーションなどで止まっていた時のデータが加味されてしまうからです。

トレイルランニングの場合は各セクションごとにデータを分析してあげる必要があります。

そんな時に役立つ機能がEnduroに搭載されているウルトララン・アクティビティモードです。

ウルトララン・アクティビティには、休息タイマーが含まれており、休憩中やエイドステーションで過ごした時間を記録することができ、走っていた時間をより正確に確認できます。

ClimbPro機能の機能拡張

EnduroのClimbProでは登りだけでなく、下りの情報も含まれる。

ClimbProは傾斜(%)や距離、標高の上昇を含め、今現在とこれからの登りに関するリアルタイム情報が表示される機能でした。

時計内にGPXファイルを送信することで、ルートの中で何回の「登り」があるのか?各登りの平均傾斜は何%なのか?距離は何kmなのか?何mの登りなのか?をそれぞれ表示してくれます。

トレイル中は非常に有用な機能です。

これまでは「登り」に関する情報のみが得られていましたが、EnduroのClimbProトレイルの拡張機能では、下りに関する情報が得られるようになっています。

更に、各セクションが始まる前にアラートで知らせてくれる機能も加わりました。

ClimbProで各セクションの全体像を把握し、セクション内の現在地把握に役立てるといいでしょう。

尚、ClimbProで登りだけでなく下りの情報を得る場合には、ClimbProを「オン」にしておきましょう。「ランモード」ではClimbProがデフォルトでは「オフ」になっています。

「トレイルランモード」はデフォルトでClimbProが「オン」になっているはずです。

仮に同じルートであっても、ランモードでクライム確認をした場合、登りの情報が得られるだけで、下りの情報は表示されませんでした。

Enduroには無い2つの機能

Enduroはハイエンドのウォッチデバイスであり、ForeAthleteやfenixに搭載されている機能は全て搭載されていると思うかもしれません。

しかし、Enduroには2つの機能が搭載されていません。地図機能とミュージック機能です。

ガーミンの全機能が搭載されているから・・・という理由で購入を検討している方は注意しましょう。

地図機能

Enduroには等高線やルート周辺の地図情報が表示されない

Enduroに搭載されていない機能の1つ目は、地図機能です。

人によっては「トレイルランナー向けのガーミンデバイスなのに、地図機能が無いのはおかしいのでは?」と思うかもしれません。

fenixに限らず、今では945を含めた一部のForeAthleteシリーズにも地図機能は搭載されています。

もちろん、Enduroには地図機能以外のトレイルランニングに必要なアウトドア機能(コースナビゲーション、2地点間ナビゲーション、トラックバックなど)は搭載されています。

なので、Enduroはトレイルランニングで活用できるデバイスに変わりわないのですが、バッテリーの持続時間を最大化するために、地図機能を削ったと考えるのが自然です。

もちろん、ルートだけでなく、等高線や周辺の地図情報を取得できれば、「これから急坂が待っているな!」とか「もう少しでピークに到着するぞ!」とか「もう少しでロードに出れるぞ!」などの情報が得られるので、ランナーとしては非常に助かります。

数年前と比較すると、バッテリーの稼働時間は著しく伸びました。

来年辺りに出るデバイスは地図機能を搭載した超ロングバッテリーモデルが出ているかもしれませんね。

ミュージック機能

Enduroには時計内に音楽を格納する機能がない ※スマホ上の音楽をコントロールすることは可能

地図機能の他にも、Enduroにはミュージック機能がありません。

スマホを持たずに、音楽を聞きながら走ることはできないわけです。

なぜミュージック機能を実装しなかったのか?理由は2つ考えられそうです。

1つはバッテリーの稼働時間を長持ちさせるため。

音楽を聴きながら走ると、バッテリーの消費が大きくなります。

もう1つは、ウルトラトレイルに参加するようなランナーには、音楽を聴きながら走るという需要が少ないと判断したのではないかと考えます。

「山で音楽を聴きながら走るのは危険だから」という理由も考えられるでしょう。であれば、fenix 6シリーズにもミュージック機能が搭載されなかったはずです。

尚、スマートフォン内の音楽をEnduro上でコントロールすることは可能になっています。

Enduroの使用感をレビュー

ここからは、実際にEnduroを使用した感想を含めて紹介していきます。

以下の2点はロード・トレイルを問わず、関係してくる項目と言っていいでしょう。

ディスプレイの大きさによる視認性の向上

Enduroは画面が大きくて見やすいのが特徴です。945のディスプレイサイズと比較すると、画面の大きさは一目瞭然です。

その分時計本体は大きくなっていますが、Ennduroのチタンモデルはベルトを入れて61gとアウトドアウォッチ用のGPSデバイスの中では、それほど重たい部類には入りません。

また画像解像度も280 × 280ピクセルとこれまでのモデルに採用されてきた240 × 240ピクセル良いも解像度が上がっています。

Apple Watch等のスマートウォッチと比較すると、解像度は高くありませんが、決して見にくいということはありません。

アクティビティモードで最大8項目のデータが表示できる

ディスプレイサイズが大きくなったことによって、アクティビティ中のデータフィールドに表示させることのできる項目が最大8項目となりました。

ForeAthlete 945では最大6項目の表示となっていましたが、Enduroでは更に2つの項目を表示させることが可能です。

数年前まではデータフィールドに4つの項目しか表示させることができなかったので、ランニングパワーを表示させると、残り3つに何を表示させるか?は悩みのタネとなっていました。

Enduroでは最大8項目表示させることができるので、今度は何を一緒に表示させるか?選択肢が多くて悩むかもしれませんね。

まとめ

今回はガーミンからリリースされたウルトラトレイルランナーのためのGPSウォッチ、Enduroについて紹介しました。

バッテリーの稼働時間がソーラー充電を活用することで、最大80時間に伸びました。

これによって、どんな100マイルレースでも、モバイルバッテリーで充電することなく完走することが可能です。

レース中に、バッテリーの残り時間を気にすることなく走ることができます。

個人的には、Enduroに付属するバンドがナイロンバンドなのが少し残念ですが(シリコンバンドのフィット感の方が好みです)、デバイス全体の軽量化のために、ナイロンバンドが採用されたのでしょう。

トレイルランナーの中でも、トレイル中の地図表示に魅力を感じる方はEnduroよりも、GPS計測で最大60時間のバッテリー容量を誇るfenix 6Xもしくは6X Pro Dual Powerが選択肢になってくるのではないでしょうか。

Enduroはスチール製、チタン製共に価格が10万円を超えますが、fenix 6XはどちらもEnduroより価格が若干高めなので、悩ましいですね・・・。