今さら聞けない!ランナーのためのGORE-TEX製品の選び方と活用法

マラソンやトレイルランニングレースに参加するランナーなら、きっと「雨風の強い日に走らなければならない・・・」というシーンもあるでしょう。

レース当日はもちろん、トレーニングの日に雨風から身体を守る必要が出てくるかもしれません。

そんな時に必要な雨具や防寒具は、どんなものを選ぶでしょうか?

できることなら単に雨風を凌ぐだけでなく、同時に高いパフォーマンスが発揮できるだけの「快適性」を求めたいところです。

ですが、ランニング中に着用するレインウェア1つとってみても、様々な種類が存在します。

「正直どれを選んでいいのか分からない・・・」というランナーも多いはず。

そこで今回はランニング中に雨風から身体を守り、同時に快適性を目指したGORE-TEXブランドについて紹介をしていきます。

ランナーなら、どこかで一度は聞いたことがあるであろうGORE-TEX(ゴアテックス)について、詳しく見ていきましょう。

GORE-TEXとは?

GORE-TEX(正式名称:GORE-TEX ファブリクス)とは、WLゴア&アソシエイツ社(以下、ゴア社)が製造販売する防水透湿性素材を指します。

ゴア社は工業用品の素材メーカーとして1958年にアメリカで創業された企業です。

現在では工業製品、医療製品、そしてGORE-TEXブランドを中心とした衣料品を扱う事業を展開。

GORE-TEXブランドでは、GORE-TEXブランドロゴにも記載されている”GUARANTEED TO KEEP YOU DRY(製品を通じてドライで快適にすることを保証する)”をブランドプロミスに、モノづくりをしています。

通常、素材メーカーの場合は素材をブランドに販売してビジネスが完結しますが、GORE-TEX製品は各ブランドの最終製品に至るまで、ブランド、工場と協力しながら品質を担保していく独自の体制を持ち、最終製品に対しても保証制度を持っているのが特徴です。

そのため、製品着用時に水が漏れて入ってきてしまったり、製品の機能に満足がいかなかった場合は商品を交換したり、返金対応するところまで品質に対して徹底してビジネスを行っています。

GORE-TEX製品の特徴

GORE-TEX=防水性に優れた製品という認識を持っている人は多いのではないでしょうか?

ですが、もう少し詳細を見ていきましょう。

GORE-TEX製品はePTFEというフッ素樹脂でできたフィルム(GORE-TEXメンブレン)が全ての製品のコアになります。

例えば、GORE-TEXファブリクスが搭載されたレインウェアの場合、生地が3層構造になっているものが多く、この場合GORE-TEXメンブレンを挟むように表地と裏地の3層で生地が構成されています。

GORE-TEXメンブレンがあることで、雨などの水滴の浸入を防ぎながら、発汗によるウェア内部の蒸れ(水蒸気、湿気)を外に逃すことができるわけです。

さらに、GORE-TEXメンブレンは風を防ぐことができます。

つまり、GORE-TEXメンブレンは防水透湿(湿気を外に逃す)・防風性能を持った生地であり、雨風の強い日のランニング時に効果を発揮するわけです。

またGORE-TEXメンブレンは耐久性にも優れています。

GORE-TEXメンブレンは経年劣化しづらいのが大きな特徴で、そのため長く使用することができるわけです。

ここでは特にランナーの使用シーンが多いであろうレインウェアとランニングシューズについて、その特徴を紹介していきます。

レインウェア

GORE-TEXファブリクスが搭載されたレインウェアを語る上で、まず理解しておきたいのが生地素材についてです。

上の写真のように、GORE-TEXファブリクス(右)とビニール素材(左)にお湯を入れると、ビニールは水と蒸気を通しませんが、GORE-TEXファブリクスは水は通さず蒸気を通していることが分かります(右のコップは曇っていますよね)。

つまり、ゴミ袋やビニール製のポンチョを着て走ると、雨のウェア内浸入はありませんが蒸気が内部に滞ってしまい、蒸れてしまいます。

一方、GORE-TEX製品の場合は雨の浸入は防ぎますが、ウェア内の蒸気を外に逃すことができるので、快適にランニングを含めたアクティビティができるわけです。

GORE-TEXメンブレンを含んだ、レインウェアの各種プロダクトは『GORE-TEXプロダクトテクノロジー』の項目で詳しく解説します。

ランニングシューズ

次にランニングシューズについて。もしかすると、これまでランナーの多くは防水性のあるランニングシューズを履く機会が少なかったかもしれません。

では、どういうシーンでGORE-TEXファブリクスが搭載されたランニングシューズを履けばいいのでしょうか?

レインウェア同様、GORE-TEXフットウェアは雨はもちろん、細かい砂や砂利を防ぐことができます。

通常のランニングシューズで採用されているメッシュ生地は、風を通すことでシューズ内の蒸れを逃します。

一方、GORE-TEXフットウェアの場合はシューズ内外の湿度の差によって蒸気を外に逃します(蒸気は暖かくて湿ったところから、冷たくて乾いたところに移動する)。

特に冬場であれば、足先の冷えを防ぐことができるので、寒い環境で雨が降っている場合はGORE-TEXフットウェアをチョイスすると良いのではないでしょうか。

これまでのゴアテックス製ランニングシューズはブーティータイプ(写真左)で、フィット感の部分で課題が見られる場合がありましたが、GORE-TEXインビジブルフィットフットウェア(写真右)というテクノロジーによって高いフィット感が得られるようになったのも大きな特徴です。

GORE-TEX製品のメンテナンスや洗濯方法

実際にGORE-TEX製品を使う中で、意外と悩むのが洗濯を含めたメンテナンス方法です。

日頃使用するウェアやシューズはどのようにメンテナンスすればいいのでしょうか?

「GORE-TEX製品は高価で生地が特殊だから、メンテナンスも特殊なのでは?」

と思う人がいるかもしれません。

ですが、洗濯表示を見てもらうと、基本的には手洗いができるものがほとんどで、洗濯機で簡単に洗えるものもあります。

洗濯の頻度も、他の一般的なウエアと同じく、こまめに洗ってあげた方が良いそうです。

前述した通り、GORE-TEXメンブレンは耐久性にも優れ、経年劣化しづらいため、当然洗濯で機能が落ちることもありません。

撥水性に関しては表地に施されるので、汚れによって機能が落ちてきますし、自身の汗や皮脂の汚れが生地に残ってしまうことでも機能は低下してしまいます。

なので、GORE-TEXファブリクスの機能を十分に活かすためにも、こまめに洗濯をしてあげることが重要です。

洗う時の注意点としては液体洗剤を使うこと

中性洗剤で香りや柔軟剤、漂白成分がないものを使用しましょう。

洗剤残りを防ぐため、洗剤は少なめでOK。

生地の表面に洗剤成分が残らないように、すすぎは2回以上行うと良いそうです。

アウトドア用洗剤は洗剤成分が残りにくかったり、撥水剤の成分が入っていたりとメリットがあります。

ですが、アウトドア用洗剤は一般的な中性洗剤より値段が高く、それによって洗濯頻度が下がるのであれば、一般的な中性洗剤を使って頻度を落とさずに洗濯をしたほうが良いとのことでした。

GORE-TEX製品の寿命について

繰り返しになりますが、GORE-TEXメンブレンは耐久性にも優れ、経年劣化しづらいため、基本的にメンブレンの寿命はありません

※ただし、登山やトレイルランニング中に木の枝に引っかかったり、転倒してメンブレンにダメージが加わることはあります。

なので、GORE-TEXメンブレンの寿命ではなく、例えばウェアの表地が汚れたり、機能が落ちることはありますし、各部位の生地の縫い目から浸水を防ぐシームレステープが剥がれると、当然のことながら本来の機能が損なわれます。

繰り返しになりますが、長く使用するためには日頃のメンテナンスが欠かせないということです。

使用しない場合は、高温多湿環境や直射日光の当たるところを避けて保管するようにしましょう。

GORE-TEXプロダクトテクノロジー

最後に、GORE-TEX製品の中で「どんなレインウェアを選べば良いのか分からない」という声も多いため、レインウェアを選ぶ基準となるGORE-TEXプロダクトの3つのプロダクト(テクノロジー)について紹介します。

ウェア選びの参考にしてみてください。

GORE-TEX PRO プロダクト

まずはじめにご紹介するのはGORE-TEX PROというプロダクトです。

GORE-TEX PROプロダクトはランニング中に使用するタイプのプロダクトではなく、過酷な環境下で山登りなどをするような人が使う製品で、いわゆるハードシェルがほとんどです。

過酷な環境下でも信頼できる耐久防水性や透湿性を備えています。

GORE-TEX PROプロダクトは頑丈さなどを備えた過酷な環境下のためのシェルのため、ランニングには適しません。

ランニング向けのプロダクトではありませんが、他の2つとの違いを知ってもらうべく、紹介しました。

GORE-TEX PACLITE®プロダクト& GORE-TEX PACLITE® PLUSプロダクト

次にご紹介するのはGORE-TEX PACLITE®プロダクトと、それが進化したGORE-TEX PACLITE® PLUS プロダクトです。。

通常のレインウェアはGORE-TEXメンブレンを含めると、表地と裏地の計3層構造になっているものが多いですが、PACLITE®プロダクトやPACLITE® PLUS プロダクトには裏地がありません。

裏面は汚れや摩耗に耐えられるようにコーティングが施されています。

裏地がない分、軽量化でき、パッキングがしやすいわけです。

PACLITE®プロダクトは裏地がない分、Tシャツの上から羽織ると、肌にに張り付くように感じる場合もあります。

一方、PACLITE® PLUSプロダクトは裏地の表面に特殊なコーティングが施されていて、ドライタッチで肌離れが良く、より快適なランニングが可能です。

特にトレイルランニングや登山では雨が降っていなくても、レインウェアの携帯は必須ですよね。

雨天時のランニング中に使用する場合も、バックパック内に携帯する場合にも役に立つプロダクトだと言えます。

GORE-TEX SHAKEDRY™プロダクト

3つ目に紹介するのはGORE-TEX SHAKEDRY™というプロダクトです。

GORE-TEX PACLITE® プロダクトやGORE-TEX PACLITE® PLUS プロダクトには裏地がありませんでしたが、反対にSHAKEDRY™ プロダクトには表地がありません。

GORE-TEXメンブレンが特殊な加工を施したGORE-TEXメンブレンを表地として採用しているため、生地が保水することがなく、恒久的な撥水性を発揮。

GORE-TEXメンブレンと裏地を合わせた2層構造が、高い透湿性と軽量性、コンパクト性を実現しています。

特に暑がりでウェア内の蒸れが気になるランナーにはおすすめ。

撥水性が抜群なので、トレイルランニングだけでなく、雨が降っていて気温が低い時のウルトラマラソンには最適のプロダクトです。

GORE-TEX SHAKEDRY™プロダクトは耐久性の面から、背負えるのは軽量のバックパックのみで、重い荷物を背負う活動には適しません。

メーカーによってはバックパックを背負った上から羽織る形で着用できる設計のウェアも展開されています。

まとめ

今回は多くのランナーの認知を得ているGORE-TEX(ゴアテックス)ブランドについて、改めて製品の紹介からメンテナンス方法、ランナー向けのプロダクトまでを紹介してきました。

ゴアテックスブランドについて、「名前は知っているけれど、細かいところまでは知らない・・・」という人も多かったのではないでしょうか?

ゴアテックス製品であれば、どの製品を選んでも同じというわけではなく、生地の構造などによって機能が異なってきます。

プロダクトやメンテナンス方法について正しく理解し、自身が重視する機能(例えば、保温性よりもウェア内の蒸れを何とかしたい等)や使用シーンに合わせた選択をしていきましょう。