マラソンのトレーニング論より先に考えたい目標達成のための原理原則3つの視点
「マラソンで速くなるためにはどんなトレーニングが必要なのか?」
あなたがランナーであるならば、一度は抱く疑問なのではないでしょうか?マラソンのトレーニング論は研究的知見から得られたものや、先人たちから伝わる経験が凝縮されたトレーニングノウハウもあるでしょう。
本やインターネットで探しても、様々なトレーニング法があることが分かります。
中には、「頑張って走っていればそのうち速くなる!」という方もいるかもしれません。
確かに、今まであまり運動をしてこなかった人であれば、運動習慣が身につくだけで、ある程度の体力がつき速く走れるようになります。ですが、マラソンで何らかの目標達成をしようとすると、ただ「頑張って走る」だけでは限界があります。
設定した目標に対して最短・最速で成果を出すためには、実際のトレーニング論を考える前に、3つの視点を持つことが大切になってきます。
では、マラソンで目標を達成するためにはどんな視点を持つ必要があるのか?一緒に考えていきましょう。
目次
現実的な目標設定 VS 非現実的な目標設定?
何らかの目標設定をしようとすると、1つの疑問が湧いてきます。「この目標は現実的に考えて、達成可能な目標なのか否か?」という疑問です。
フルマラソンで自己ベスト3時間58分のあるランナーがレースでサブ3を達成する!という目標を設定したとします。
この目標設定は果たして現実的といえるかどうか?あなたならどう考えますか?
色んな意見があるかと思います。
ですが、実は設定した目標自体がが現実的かどうかは重要ではありません。
大事なのは目標達成までのプロセスを具体的に立てることができるかどうか?です。
自己ベスト3時間58分のランナーがフルマラソンでサブ3を達成するまでの具体的なプロセスを立てることができれば、理論上は目標達成が可能ですし、具体的なプロセスが描けないのであれば、目標達成は難しいと言えるでしょう。
中には、設定した目標に対して「やるぞ!」という気合だけで何とかしようとする人がいます。気合を入れることも時には大事ですが、もっと大事なのは、具体的な行動プランに落とし込んだ上で、どうやってプランを実行していくか?ということです。
では、プランをどう作るか・・・?というテーマに入る前にもう少し目標設定の方法を深掘りしていく必要がありそうです。
なぜなら、目標設定が具体的でない限り、具体的な行動プランが作成できないからです。
目標を設定する上で大切な要素は、
①期限が設定されていること
②計測できる結果や成果が含まれていること
が必須条件です。前述の「自己ベスト3時間58分のランナーがフルマラソンでサブ3を達成する」だと期限がありません。計測できる結果や成果に関してはサブ3という表記があるので、問題ありません。
では、サブ3を達成するまでに要する期間は3ヶ月が適切なのか?6ヶ月が適切なのか?
多くの方が悩むポイントかもしれません。
繰り返しになりますが、3ヶ月でサブ3達成の具体的プロセスが描けるのであれば、3ヶ月で設定すればいいですし、6ヶ月でサブ3達成の具体的プロセスが描けるのであれば、それでも構いません。
では、どうやって具体的なプロセスを描くのか?
ここで大事なのは、まず現状と目標までのギャップを把握することです。つまり、「目標を達成するための課題は何なのか?」ということ。
自己ベスト3時間58分のランナーが6ヶ月間でフルマラソン・サブ3を達成するという目標だったとしたら、58分以上の差を埋めなければならないわけです。
できていないこと、知らないこと、分からないこと、足りないことを洗いざらい出していきます。
課題をすべて出すことができれば、1つ1つに対して解決策を出していく。もちろん、解決策に「正解」はありませんが、何らかの解決策を出すことができれば、あとは実際に策(アクションプラン)を実行していくだけです。
目標と現在地との距離を常にチェックしておく
ただし、課題を洗い出し、アクションプランができれば目標は達成できるのか?というと、決してそうではありません。
アクションプランを実行していく中で、順調に目標に近づくこともあるでしょうし、目標と現在地の距離が思った以上に開いていて、プランを修正する必要だって考えられます。
ですから、アクションプランは作って実行するだけではなく、適宜修正していく必要があります。
ビジネスでもそうですが、目標設定から目標を達成するまでのプロセスの中で手腕が試されるのが「修正力」です。
目標と現在地との距離を常にチェックしておけば、レース本番で失敗するリスクは極力抑えることができます。
市民ランナーの場合は、トップランナーと違って駆け引きがありませんから、当日のコンディションと水分・エネルギー補給、レースマネジメントさえ上手くいけば、実力通りの力を発揮することは可能なはずです。
ですが、実際にレース本番になると周りに流されてしまい、自分のペースを見失ってしまうケースはよくありますし、前半特に身体が軽いと「今日は物凄く調子がいいのではないか!?」と設定ペース以上で走ってしまうことも多々あります。
自分の実力はトレーニング期間中で充分把握できているはずです。
常に現在地を認識すること。
目標達成までの準備ができていないのに、レース当日に奇跡が起きることはまず考えられません。
ですから、準備ができていなかったり、目標と現在地の距離があまりにもかけ離れている場合は、無理に設定したペースでレースを押し通すのではなく、下方修正する必要があるわけです。
目標と現在地とのギャップを図る場合、簡単にギャップを認識できるものが2つあります。
1つはジャック・ダニエルズ氏の提唱するVDOT理論です。10㎞やハーフマラソンの記録からフルマラソンのおおよその記録をはじき出してくれます。
フルマラソンレースでの目標達成を目指す場合、どこかのタイミングで10㎞なりハーフマラソンの記録を計測できれば、自分がどのあたりの記録が目指せるのかが理解できるようになります。
もう1つは30㎞走です。
30㎞走は色んな目的で、取り組まれている方がいらっしゃると思います。30㎞走は現在地を把握するという意味では変わりありませんが、ここではVDOT理論と照らしあわせるために行うわけではありません。
つまり、30㎞走でベストタイムを狙うような走りはしないということです。多くのランナーが30㎞走をフルマラソンの距離の不安をなくすための練習方法だと思い込んでいます。
確かにそういう面もあります。ですが、現在地を把握する、フルマラソンレースでのゴールタイムをイメージする目的で走っている方は恐らくほとんどいないのではないでしょうか?
例えば、30㎞走を全力を出し切って走った時の平均ペースが4分30秒だったとしましょう。この場合、本番のフルマラソンで平均4分30秒ペースで走り切ることはまず難しいわけです。
では、適正ペースは4分40秒なのか、45秒なのか?
この問いに対する解を導き出すために、30㎞走を残り12㎞は何とか走れる程度の余力を残した状態で終わらせます。もちろん、その時の記録が正確な数字とは言い切れません。ですが、余力を残した状態で30㎞を走ることで、現在地を把握し失敗レースを減らすことができるわけです。
見落としがちな身体の使い方の改善
課題が見つかり、課題群を解決するために描いたアクションプランの中には、様々なカテゴリーが含まれていることでしょう。練習内容はもちろん、メンタルのことや練習時間の確保に関することなど、様々なテーマが考えられます。
ですが、往々にして自身の「身体の使い方」や走ること以外の課題(筋力や柔軟性など)はなかなか挙がってきません。
走ることで得られる筋力は確かにありますが、そもそもの身体の使い方に大きな癖がある状態でトレーニングを積んでいくと、怪我に繋がるリスクがあります。
怪我は100%予防はできません。ですが、しなくても良い怪我は予防することができます。
例えば、ランニング中にどうしてもお尻が使えずに、ふくらはぎで走ってしまうランナーがいたとしたら、スピードを上げて走ったり、長い距離を走るような練習の時にふくらはぎが毎回パンパンに張ってしまう可能性があります。
ランニングは同じ動作の繰り返しです。不適切な身体動作を繰り返すことで、特定の部位に余計なストレスをかけてしまいます。
ですから、極力怪我をしないようなランニングフォームの獲得が必要になったり、走る前のウォーミングアップや走った後のクーリングダウンを徹底することなど、練習メニュー意外に考えなければならないポイントは幾つもあります。
もちろん、自分自身のランニングフォームや走り方の癖を把握することは難しいわけです。自分で自分のランニングフォームを見れるわけではありませんから。
なので、一度はしっかりと自分の身体の癖を見てもらう機会を作っておきましょう。
まとめ
今回は「マラソンのトレーニング論より先に考えたい目標達成のための原理原則3つの視点」というテーマで、目標設定からアクションプラン作成までの考え方、目標と現在地とのモニタリング、身体の使い方という3つの視点から解説をしてきました。
目標達成のためにどんなトレーニングをするか?は非常に重要です。
ですが、トレーニングの方法論ばかりで「なぜ、そのトレーニングを行うのか?」という問いに答えられるランナーは少ないように感じています。
もちろん、全てを無駄なく効率的にやりましょう!と言うつもりはありません。ですが、限られた時間の中でランニングを楽しみ、設定した目標を達成したいのであれば、「ただ何となく走る」という行為から抜け出さなくてはなりません。
ランニングの走行距離が長ければ長いほど良いというわけでもありませんし、負荷の高いトレーニングはそれだけ身体的に加わるダメージも大きくなってしまいます。
まずはトレーニング論よりも先に、考え方をインストールすることから始めましょう。