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マラソンのトレーニング「閾値走」って何?計測から実施方法を解説

マラソンとトレーニング
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マラソンのトレーニングの一つに「閾値走」というトレーニングの方法があります。このトレーニングは血液中の乳酸濃度や二酸化炭素量、換気量が急激に増加する手前の速度で走るトレーニングです。今回はこの閾値走の原理や方法について説明していきます。

※ここではわかりやすく、閾値=乳酸性作業閾値(LT)として紹介をしていきます。

LT(Lactate Threshold)とは?


※図1:乳酸性作業閾値(LT)のイメージ。LTを境に血中乳酸濃度が急激に上昇する。

閾値走について理解するために、まずは「LT」とは一体何なのかを知る必要があります。

LTはlactate thresholdの略で、日本語では「乳酸性作業閾値」と訳されています。

運動強度を高めていくと、グリコーゲンの代謝産物である乳酸が血液中に蓄積されていきます。

比較的低い運動強度であれば、強度に比例して血中の乳酸濃度が上昇していきますが、ある運動強度を境に急激に乳酸の濃度が上昇します(図1のようなイメージ)。この時の運動強度をLTと呼んでいます

運動をする際には脂肪とグリコーゲン(糖質)が主要なエネルギー源として使われます。

グリコーゲンに比べると、脂肪は使いづらいエネルギー源です。なので、運動の強度が低いと脂肪を使うことができますが、運動強度が高くなると脂肪をうまく使えず、グリコーゲンを多く使うようになり、急激に乳酸が蓄積してしまうのです。

LTはミトコンドリアの機能を間接的に評価する指標として用いられます。

ミトコンドリアは生体内のエネルギー工場と言われる器官で、グリコーゲンや脂肪を分解することでエネルギーを作っています。

グリコーゲンはピルビン酸という物質に分解されてからミトコンドリアでさらに代謝されるのですが、ミトコンドリアの量には限りがあるので、運動強度が高まると入りきらないピルビン酸は乳酸へと変換され、血中へ放出されます。

そのためLTの強度が高くなると、ミトコンドリアの量が増えた、ということが言えるのです。

LTの測定


※注意:写真はイメージです。乳酸濃度測定に換気量を計測するマスクは必要ありません。

閾値トレーニングを行うにあたって、まずは自分のLT値がどれくらいなのかを知る必要があります

LT値は乳酸カーブテストという方法で測定できます。

この方法はトレッドミル(ランニングマシン)を用いて一定の速度で3分程度走った後に血液を採取し、血液中の乳酸濃度を測定するという方法です。

徐々に速度を上げて、速度-乳酸濃度のグラフを作り(図1のようなもの)、急激に乳酸濃度が上昇する点を見つけることでLT値を測定します。

この方法では、トレッドミル(ランニングマシン)と乳酸を測定する機器があれば、LT値を知ることができます。

ですが、まず乳酸を測定する機器を個人的に持っている人はいません。血液を採取する必要もあるので、実施は困難です。

そこで、LT値を推定する簡易的な計算方法を紹介します。

LT速度の心拍数 = (220-年齢-安静時心拍数)×0.75+安静時の心拍数

この式は、LT速度で走っている時の心拍数が最大心拍数の75%と仮定して計算した結果となります。※220-年齢はその人の最大心拍数(予測値)を表します。

参考文献 : 運動負荷漸増に伴う酸素摂取量と心拍数の関係

この式を用いて、LT速度時の心拍数を計算します。そうすると、LT値の目安が分かります。

ただ、よりトレーニングを積んでいる人の場合、LT値はこれよりも速くなります。

本当のLT速度を知るには、実際に乳酸濃度を測定する必要があるので一つの目安(あくまで大まかな予測値)として捉えて下さい。

他にもGPSウォッチを活用した乳酸性作業閾値(こちらも予測値)の計測も可能です。

閾値走の実施方法

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LT値が分かったら、閾値走に活かしていきましょう。

閾値走の方法としては2種類の方法があります。1つはLT速度もしくはLT心拍(以下、LT強度)で20分以上走り続けるという方法です。

もう一つはLT速度で5〜15分を、数分のインターバルを挟みながら5〜10本程走る方法です。

閾値走は60分程度まで維持することができる運動強度とされているので、強度の高いトレーニングに分類されます。

重要なのは、LT強度でのランニングを維持することです。その運動強度よりも高くても、低くてもよくありません。LT強度で走ることで、乳酸を除去する能力を最大限に高めることができます。

閾値走で得られる効果

閾値走では主に乳酸を処理する能力が得られます。

筋肉には瞬発力はあるが持久力の乏しい「速筋」と、瞬発力はないが、持久力に優れた「遅筋」の2種類があります。

乳酸は主に速筋で作られ、血液を介して遅筋に送られてエネルギー源として代謝されます。

速筋から血液に乳酸を放出するのにはMCT4というタンパク質、血液から遅筋に乳酸を取り込むのにはMCT1というタンパク質が必要になります。

閾値走を行うことで、こうしたタンパク質を増やし、血中の乳酸を素早く処理する能力が高まります。

乳酸除去能力が高まると、同じ運動強度でも血液中の乳酸濃度が低い状態で運動を行うことができます。

その結果、LT値は上昇します。LT値がどれだけが上昇したか?を見ることで、どれだけトレーニング効果を得られたかが分かるわけです。

閾値走を行う際の注意点

閾値走を行うにあたっては、注意点があります。繰り返しになりますが、まずはLT強度をしっかり守ることです。このLT強度を守ることで、効率的にトレーニング効果を引き出すことができます。

LT強度が正確に分からない場合は、前述した推定のLT値を基準にし、ランニング中の心拍数を測り、その心拍数に近い状態で走り続けるようにしてください。

LT値はトレーニングにより変化していきます。そのため定期的に乳酸カーブテストを行い、LTを見直すのが望ましいです。

また、閾値走は強度の高いトレーニングなので、過度に実施するとオーバートレーニングに陥る可能性があります。

自分のトレーニング状況と比べて適度に取り入れるようにしましょう。

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中野卓

中野卓

運動生理学、スポーツ栄養学を専攻する大学院生。
トレーニング効果を高める栄養素についての研究を行っている。
マラソンやランニングに関する有益な情報を、運動生理学やスポーツ栄養学的な観点から発信していきます。

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