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脂肪をうまく活用してマラソンのパフォーマンスを高める方法

 2018/03/26 マラソンとトレーニング ランニングノウハウ
この記事は約 6 分で読めます。 7,173 Views

マラソンを走る際、体内に蓄えられた糖質であるグリコーゲンと脂肪が主要なエネルギー源として使われます。いわば、ガソリンのようなものです。

グリコーゲンは体内に蓄えられる量が限られており、マラソンを走っている途中に枯渇し、パフォーマンスの低下に繋がる恐れもあります。

なので、マラソンではグリコーゲンの利用をできる限り節約することが大切です。

では、どうすればグリコーゲンの利用を節約できるのか?

その方法の一つはランニング中にエネルギー源として使われる、脂肪を上手く活用することです。

今回は、ランニング中のエネルギー源として使われる、脂肪の利用率を高め、マラソンのパフォーマンスの向上に繋げる方法を紹介していきます。

トレーニングにより脂肪の利用が高まる


※運動強度の違いによって、糖質、脂質の利用率は異なってくる。

マラソンのトレーニングの一つとして、長時間走り続ける持久的なトレーニングがあります。LSDのようなトレーニングです。

LSDのようなトレーニングを行っていると、筋肉内のエネルギーを作り出すミトコンドリアが増加し、より多くの脂肪を使えるようになります。

トレーニングをするとエネルギーを消費します。するとエネルギーセンサーと言われるAMPKというタンパク質がエネルギーの消費を感知して活性化されます。その結果、体内でエネルギーを作り出すミトコンドリアという器官が合成されるわけです。

実際にトレーニングをしていない人と、トレーニングした人で呼気ガス分析(吸う息と吐いた息の酸素、二酸化炭素濃度を比較し、糖質と脂肪の利用量を調べる分析方法)を行うと、トレーニングしている人の方がより脂肪をエネルギー源として利用していることが分かります。
※Rahkilaらの研究。Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 

トレーニングをしたら脂肪を使えるようになるのは当たり前かもしれませんが、意外と見落としがちです。そもそも論ではありますが、まずはトレーニングを積むことが大切です。

LSDでは、ミトコンドリアが増えるだけでなく、毛細血管の密度が上昇し、筋肉により多くの酸素を送ることができるようになったり、体内に運ばれた酸素をより多く使うことができるようになったりします。

高脂肪食で脂肪の利用が高まる

脂肪をエネルギー源として使えるようにしたいのであれば、普段の食事で多く脂肪を摂取していればいいのでは?という単純な考えを思いつくかもしれません。

実はあながち間違いではありません。脂肪を多く含む食事を摂取していると脂肪をより利用できるようになるのです。

トレーニングによる脂肪利用の増加にはAMPKというタンパク質が関与しています。高脂肪食による脂肪利用の増加にはPPARδという、別のタンパク質が関係しています。

脂肪は、食品ではグリセリンという物質に3つの脂肪酸が結合した形になって存在しているのですが、私達が脂肪を食べると腸で消化され、血中に入る時にはグリセリンと脂肪酸の形に分解されています。

そして、脂肪酸は筋肉にあるPPARδという受容体と結合し、脂肪酸化関連の酵素の発現を上昇させます。

脂肪を60%以上含む高脂肪食を摂取していると、通常食を摂取するよりも血中の脂肪酸の濃度が上がるため、筋肉でよりPPARδと結合して脂肪酸酸化関連の酵素の発現を上昇させることができるのです。

それでは脂肪を多く含む食事を摂取しているとマラソンのパフォーマンスが上がるのか、というと必ずしもそうとは言い切れません。

なぜかと言うと、高脂肪食は太りやすいからです。

いくら脂肪を利用できるようになったからといっても、体重が増えてしまったら、よりエネルギーが必要となってしまうので本末転倒です。

それでは、脂肪の利用を高めつつ体重を維持できるような食事はないのでしょうか?

実は次にご紹介する「ケトン食」と呼ばれる食事が近年注目を浴びています。

注目の低糖質高脂肪食である「ケトン食」

先程示した高脂肪食では、多くが脂肪を占めていますが、ある程度糖質も含まれています。

糖質が含まれていると、食後に血糖値が上昇し、インスリン(血糖値を下げるように働くホルモン)が分泌されることにより、脂肪の合成が促進されてしまいます。そのため高脂肪食では太ってしまう恐れがあります。

そこで、食後にインスリンが分泌されないように糖質を極端に減らせばいいのではないか、ということで作られたのが「ケトン食」であり、近年注目を集めています。

ケトン食は95%が脂質とタンパク質で占められており、糖質は5%以下に抑えるようにする食事のことを指します。

先程示した高脂肪食では糖質が含まれているのに対し、ケトン食には糖質がほとんど含まれないというのが特徴です。

ケトン食のイメージとしては、卵や肉、魚のようなタンパク質が豊富な食材と油とを組み合わせた食事です。具体的には、唐揚げやしょうが焼き、すき焼き、鮭のムニエルなどが挙げられます。

ご飯や粉物などは完全に排除し、タンパク質、脂質のみ摂取するのがケトン食です。

ケトン食を食べると血中の脂肪酸の濃度が上昇します。脂肪酸はエネルギーとして使われるのですが、糖質がないと完全に使うことができません。

また、インスリンも分泌されないので、脂肪組織に取り込まれることもありません。

このように行き場を失った脂肪酸は、「ケトン体」という物質に変換されていきます。

実は、ケトン体はグリコーゲンよりも効率良くエネルギーを取り出すことができる物質だと言われています。

しかし、ケトン体そのものは酸性の物質なので、体内にとってはあまり好ましい物質とは言えません。そのため、非常用のエネルギー源として用いられます。

このような食事を続けることで、普通の食事をしていたら作ることがないケトン体を作れるようになり、運動をする時にも脂肪をケトン体へと変換することで、より脂肪を利用できるようになるのです。

実際にヒトでケトン食と普通食を9ヶ月以上与えて、マラソン中のエネルギー源を調べた実験が行われています。

その結果、ケトン食を食べた人は普通食を食べた人と比べて脂肪の利用量が1.5〜2倍程度に上昇し、グリコーゲンの利用量が半分以下に抑えられたのです。

残念ながら、この実験はタイムトライアルを行っていないため、ケトン食でマラソンのパフォーマンスが向上したかどうかまでは分かっていません。

ですが、脂肪の消費量そのものは圧倒的に増えているので、グリコーゲンの利用を抑えることでマラソンのパフォーマンスを高める可能性はあるということです。

一方で、ケトン食は持久的なパフォーマンスを向上させない、という実験結果が得られたという報告もいくつか存在します。

まとめ

ケトン食については近年実験が始まったところなので、まだまだ科学的なエビデンスは不足しています。ですが、マラソンのパフォーマンスを高める可能性のある食事の方法として、注目が集まっているのは事実です。

今後さらに研究が進み、ケトン食を応用してパフォーマンスを高める方法が発見されることを期待します。

その他、サプリメントを使用しながら脂肪を活用していく方法もあります。

詳細はこちらのページをご覧ください。

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中野卓

中野卓

運動生理学、スポーツ栄養学を専攻する大学院生。
トレーニング効果を高める栄養素についての研究を行っている。
マラソンやランニングに関する有益な情報を、運動生理学やスポーツ栄養学的な観点から発信していきます。

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