マラソンの成長が頭打ちになった時に考えたいトレーニングの3原則

「ランニング歴も年齢も重ねてきたし、そろそろ記録更新の限界かもしれない・・・。」

「ランニングを初めて数年経つ割には、記録がほとんど向上していない・・・。」

もしあなたにこんな状況に陥っているなら、これからお話することは良いヒントになるでしょう。自分自身が思っている「限界の壁」は自身が勝手に作っている壁であり、乗り越えることは可能です。

今より速く走る、もしくは長く走れるようになるには、走るトレーニング(練習)が必要です。仮に筋力が向上したり、脂肪が2kg落ちたとして、走るトレーニングをしていなければ、速く走ることはできないわけです。

では、今より速く走る・長く走るためにはどんな練習が必要になるのでしょうか?

まず押さえておかなければならないのは、トレーニングにはいくつかの「原則」が存在するということです。原則を押さえること無く、むやみに練習しても思った効果を上げることができません。

トレーニングに関する7つの原則

トレーニングを実施する上で押さえておかなければならない原則は7つです。

それぞれ①特異性の原則②過負荷の原則③漸進性の原則④意識性の原則⑤全面性の原則⑥個別性の原則⑦継続性の原則の7つです。それぞれの原則に関する詳細は7つのトレーニング原則から考えるマラソン練習法にて解説をしています。

今回は7つの原則の中でも①特性の原則②過負荷の原則③漸進性の原則を踏まえて、話を進めていきます。

マラソンで今よりも速く走りたい、長く走りたいと考えた時に、トレーニングで身体に負荷をかけていくこと(過負荷の法則)、状況に応じて負荷を上げていくこと(漸進性の原則)は重要です。

例えば、全く運動をしたことがない人が健康のためにランニングを始めた時、はじめは数キロ走るのがやっとだったとしても、ランニングを継続していくことで、徐々に慣れてきます。

これは身体に一定の負荷(過負荷)をかけることで、ランニングに必要な心肺機能や筋力が向上することを示しています。

ですが、最初は自身の成長が実感できたとしても、同じように走り続けているだけでは、どこかのタイミングで成長が頭打ちになってしまいます。

既に何年もランニングを継続している人にも、同様の現象は起きてしまうわけです。

自己記録の更新を目指して、仮に毎週同じような練習を繰り返すだけの状態であれば、遅かれ早かれ記録は伸び悩んでしまいます。

ここで大事なのは、身体に加える負荷をコントロールする必要があるということです。

多くの場合、徐々に負荷を上げながら(漸進させながら)、自身のフィジカルレベルを向上させる必要があります。

どの程度トレーニング負荷を加えていくのか?

漸進性の原則に従って、身体に加える負荷を上げていくことを考えた場合、2つの疑問点が浮かび上がってきます。

1つは「どの程度トレーニング負荷を加えればいいのか?」ということ。そしてもう1つは「トレーニング負荷は上げ続けなければいけないのか?」という2点です。

まず、そもそもトレーニング負荷とは何なのか?を考える必要があります。

ランニングやマラソンの場合、トレーニング負荷は大きく2つに分けられます。

①トレーニング量(距離、時間、頻度)
②トレーニング強度

の2つです。

つまり、トレーニング量を増やそうと思った時には、走る距離を伸ばしたり、走る時間を長くしたり、もしくは走る頻度を増やす必要があるわけです。

多くのランナーに馴染みがある指標としては「月間走行距離」ではないでしょうか?トレーニング負荷を上げること=月間走行距離を増やすことだと認識している方が多いようです。

ですが、トレーニング量と同様にトレーニング強度についても考える必要があります。

トレーニング強度とは、例えば心拍数が高い状態でのランニング、ランニングスピードを速めるようなトレーニングです。

具体的には、インターバル走、レペティション、ビルドアップなどのトレーニングなどを指し、トレーニング強度を上げようと思った場合は、これらのトレーニングを組み込む必要があります。

トレーニング負荷は上げ続けなければいけないのか?

漸進性の法則を考えた場合、単純に考えるとランニングで常に成長をし続けるには、トレーニング負荷を上げ続けなければならないということになります。ですが、単にトレーニングを実施する毎にトレーニング負荷を増やしていっても、オーバートレーニングや怪我に繋がるだけで、かえってパフォーマンスは低下してしまいます。

そもそも、トレーニング量や強度を永遠に上げ続けることは、不可能です。

そこで大事になってくるのが「ピリオダイゼーション(期分け)」という概念です。

ピリオダイゼーションとは、レース当日に身体のコンディションが最高の状態で臨むために、年間(もしくはある一定期間)の練習・トレーニングをいくつかの段階に分け、その段階ごとのトレーニングを体系的に組み合わせていくことを指します。

つまり、分かりやすく言うと、シーズン毎にトレーニング量や強度をコントロールしていくことになります。

参考:マラソンで怪我なく速く走るために必要な「ピリオダイゼーション」という考え方

例えば6ヶ月後に目標としているレースがあった場合、それまでにいくつかの期分けをしていくわけです。

よくある例だと、レースまでに「準備期」「鍛錬期」「調整期」といった期分けをします。もちろん、他にも色んな期分けの方法があることが科学的に立証されています。大事なのはトレーニング量を重視する時期と、トレーニングの質(強度)を重視する時期があるということです。

単純に、トレーニング量とトレーニング強度の両方を上げ続けるのではありません。

トレーニングの量と強度をコントロールすることで、目標とするレースで最高のパフォーマンスを発揮することが可能になります。

トレーニングの効率化

先程、ピリオダイゼーションを考える際に「トレーニング量を重視する時期と、トレーニングの質(強度)を重視する時期がある」と書きました。

もしかしたらあなたは「トレーニングの量と強度の両方を追求しながら効率よくトレーニングできないか?」と考えるかもしれません。

確かに量と強度を同時に追求できる「閾値走」等は有効な手段です。特に週に1回か2回程度しか走れないランナーにとっては、非常に重宝するトレーニングだと言えます。

ただし、前述の通りトレーニングには「特異性の原則」というものがあります。

特異性の原則とは、人間の身体は特定のトレーニングに見合った適応や反応をするという原則です。

つまり、ある能力を強化・向上させたいと思った時には、それに見合ったトレーニング負荷を身体にかける必要性があります。

今よりスピードを付けたいと考えたらスピードを上げて走らないといけませんし、今より長い距離を走れるようになるには長い距離を走る必要があります。

閾値走を行うことで、閾値走で得られる能力は向上しますが、もちろん万能ではありません。

例えば、LSDにはLSDで得られるトレーニング効果がありますし、インターバル走にはインターバル走で得られるトレーニング効果があります。

たとえ、インターバル走とレペティショントレーニングは似たようなトレーニングかもしれませんが、2つのトレーニング効果が全く同じわけではありません

参考:マラソンに必須の練習・トレーニング10選

トレーニング計画は、目標や現状の課題に応じて変わってきます。ですが、速く走る、長く走るためのトレーニングは何か特定のものだけではなく、様々な刺激を身体に与えていく必要があるわけです。効率化のみを考えていても、必ずどこかで成長は頭打ちになります。

まとめ

マラソンの練習やトレーニングを考える上で、トレーニングの7つの原則は非常に重要です。今回はその中でも①特異性の原則②過負荷の原則③漸進性の原則の3つに焦点を当てて解説してきました。

普段のトレーニングが単調だったり、毎週同じようにパターン化されていると、どこかで必ず成長は頭打ちになってしまいます。

もちろん、今回ご紹介した内容は成長が頭打ちになってから、初めて考えるようなものではありません。

普段から意識して取り組む必要はあります。ですが、現時点でもしあなたが「最近なかなか成長が感じられない・・・」と思ったら、一度参考にしてみると良いでしょう。