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201X年あなたがサハラマラソンを走るための必須ガイド!

 2015/07/02 エクストリームマラソン マラソンレポート
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2015年4月3日〜13日の11日間、モロッコ南部のサハラ砂漠を舞台に第30回サハラマラソン(30th SULTAN MARATHON DES SABLES)が開催された。今大会は世界各国より過去最多の1,358名のエントリーがあった(日本からは男性29名、女性6名が参加)。今回は大会の節目となる30回目の開催を記念して、サハラマラソンの創始者であり、主催会社Atlantide Organisation Internationaleの代表でもある、パトリック・バウアー氏にサハラマラソンが生まれた背景、ストーリー、そして彼が参加者に伝えたいメッセージを踏まえ、サハラマラソンを走る「魅力」をお伝えしたい。

主催者:パトリックバウアー氏インタビュー

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Q1. サハラマラソンを開催しようと思ったキッカケは?

アフリカは幼少期時代からの夢であり、小さい頃に見た映画や聞いた冒険の話しを象徴する未知のシンボルや魅力的な大陸でした。当時、私は写真家で情熱を失いかけていました。そしてその仕事を辞め、いつも夢に見ていたアフリカへ出かけたんです。快適な生活から離れることは困難でしたが、若い時にしたい事をしなければ、一生しないと思いました。車でサハラを5回横断し、西アフリカまで向かいました。これら全ての経験が自分の中の砂漠に対する情熱を目覚めさせました。そこでは信じがたい景色や素晴らしい人々との出会いがありました。ある朝、私は弟(もしくは兄)に砂漠に歩いて出かけると告げ、3週間後、私は15Lの水と3.5kgの寝袋が入った40kgのリュックを背負い、旅をスタートさせました。その際、私のやっていることが理解できないと言った何人かのイタリア人やトラック運転手に途中で会いましたが、その中の一人が新鮮なトマトをくれ、未だにその味を覚えています。この12日間の砂漠での経験を経て、私は本当に自由になったと実感したんです。

Q2. はじめて大会を主催しようと考えた時、参加者のターゲットは明確でしたか?また、参加者を集められる見込みはありましたか?その当時のヨーロッパにおけるマラソン・ランニング事情を含めてお聞きできれば。

アフリカから帰国後、この壮大な景色は他の人にとっても飛び出していきたい場所なのではと思いました。私はランナーに途方もない冒険の経験から得られるこの広く開放的な感覚を楽しんでもらいたいと思いました。その当時はまだトレイルやウルトラトレイルが行われる前で、革新的でした。ランニング自体はどこでも行われていましたが、主に大都市されるロードでのマラソンばかりでした。サハラマラソンは現在のほぼ全てのアウトドアレースの中で、草分け的存在です。1986年に23人のランナーでスタートし、30年の時を経て、18,000人が参加し、今年は過去最多記録となる1,358人もの人が参加しました。私たちはランナーにより良いサービスを提供する為、このイベントをより優れた、そして組織的なものとして発展をさせてきました。

Q3. サハラマラソン参加に関して、どんな準備が必要か?メンタルやフィジカル面を含む。

一番に挙げられるのは、謙虚さです。砂漠をなめてはいけません。準備なくしてサハラマラソンに立ち向かう事はできないですし、完走した人は皆、準備を怠っていません。暑さや砂、風、距離はサハラマラソンをタフなイベントとし、世界で最も過酷なレースとも言われています。これはハイキングではなく、自分の能力に対し謙虚さが求められています。ほんの些細で気がかりな事であっても、レース中は気に留めておかなくてはいけません。レースに打ち勝とうとするよりも、水分補給や睡眠、食事、ペース等、レースをどう管理していくかが成功の鍵となります。また精神的な強さも必要とされますし、体が疲れると頭が動かなくなってしまいます。だから、今まで考えなかったことや制限時間に間に合うか考えてしまう。

砂漠で身に着いた精神的強さは、今後日常生活でも役立つでしょう。成功は全てを覆っています。もちろんザックが重すぎたりしてはいけませんが、全てに情熱が必要です。砂漠への情熱、冒険への情熱、他者への情熱、そしてそれを皆と共有する情熱。

Q4. サハラマラソンを通じて、参加者にどんなことを感じて欲しいのか?

人生の中で、時には魅力的な場所に旅する機会や通常の世界から切り離され、自給自足の生活で風や暑さに自分の身を投じる時もあることでしょう。仲間との団結、友情、他者との違いを尊重し、毎晩の厳しいキャンプで本来の意味を見出すでしょう。

参加者には今の社会の中では味わえない”自由”という本当の贅沢を感じて欲しいと思っています。MDSは星の下で火を焚き、毎晩ランナー同士で協力し合い、ご飯を作る特別なコミュニティーです。全てが終わるとあなたの表情は和らぎ、水ぶくれや痛みがあるにも関わらず、生きている事への喜びを感じます。競技者の一人が“心が洗われた”と話してくれました。スタート前には気がつきませんでしたが、このイベントを通して広い心を持つきっかけとなり、一人ひとりが考えもしなかった何かを見つけることができます。それは将来ずっと彼らの存在を養い続けてくれることでしょう。

Q5. これまで30回大会を主催してきて、一番印象に残っていることは何か?

一つに限定はできません。私たちは過去30年間、毎年素晴らしい経験をしてきました。多くのランナーがサハラマラソンで心が踊るような体験をしてきました。

最も素晴らしい例の一つは、モロッコ人のLahcen Ahansalが過去10回優勝しています。彼は砂漠の羊飼いで、1回目のサハラマラソンを見終わった後、スタートに立つ為に今までやってきたことを手放し、サハラに全てをかけました。彼はその後10回もレースで勝ち、今日では権威あるアスリートとして認められています。このような例は他にも沢山あります。完走メダルをランナーに手渡す際、参加者の目は輝きを放っています。これら眼差しや賛美は素晴らしい賞に値します。

Q6. サハラマラソンを企画・主催するというチャレンジの原動力はどこにあるのか?

参加者に対しては情熱です。第一に国への情熱です。モロッコは特別な国であり、モロッコの歓迎は、とてもユニークです。過去20年、Royal Highness King Mohammad VIがサハラマラソンのスポンサーになってくれました。これは素晴らしき栄誉です。それに加え、モロッコ以外の世界各国(2015年には50カ国)から参加者が集まってくれたことがとても嬉しい。仲間と共に互いに助け合い、砂漠やテントで過ごした一週間の経験は一生忘れることはないでしょう。参加者は通常、日常からかけ離れているものや相互のサポートを求めます。また。多くの参加者は信頼性や平等性を求めて、大半は寄附のために走ります。あなたはレースに必要最低限のものだけを装備していれば、あとは自由になれます。レース後は参加する前より充実していることは間違いありません。

 

サハラマラソンを走るための事前準備

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2014年6月にサハラマラソンにエントリーしてから、実際のトレーニングは8月よりスタート。パトリック氏のインタビューにもあるように、サハラマラソンを走り切るにはとにかく「準備」が必要だ。

大別すると3つの準備が必要であり、フィジカルの準備、食べ物や装備の準備、そして情報収集である。

まずは暑熱環境下でのランに身体を慣らすために、8月、9月はできる限り練習の頻度を増やし、走り切るための土台を作った。9月にステージレースを想定し、5日で157kmを走り、10月の100kmウルトラマラソンへ。11月はウルトラマラソンで剥がれた爪の影響と一時的なモチベーションの低下(所謂、中だるみ)に陥ったが、12月に指導をしているコミュニティメンバーとホノルルマラソンに参加するため、再始動。やはり、各ポイントで目標とするレースを入れておくのは大切だ。年末〜3月にかけては練習頻度よりもザックを背負い、一回あたりの距離を伸ばすことを意識して走った。マラソンやトレイルランの経験者でも、なかなか重い荷物を背負った状態で走ることは少ない。本番で受けるであろう、荷物のストレスを減らすためにも、荷物を背負った状態でのランニングやウォーキングは必須である。

本番では10㎏前後の荷物を背負って走る必要があるため、下半身や体幹の筋力を付けておくことも重要である。特に砂丘では脚力がなければ、なかなか前に進むことができない。筋力トレーニングは本番で高いパフォーマンスを出すためでもあり、怪我を予防することにも繋がる。ランニングをすることで、ただでさえ下肢には体重の3倍程の力が加わる。そこにプラス10㎏のストレスが加わることを考えると、しっかりと対策を立てておきたい。

本番までの8ヶ月で走った距離はと言うとトータル1,077km。月間平均では134kmだ。残り3ヶ月は荷物を背負って走っていたとは言え、一般のランナーであっても十分走れる距離である。

食事や装備の準備は「サハラマラソンを通じて何を実現したいのか?」によって変わってくる。もちろん、サハラマラソンを「完走すること」は全ランナーに共通する1つの目標だが、できる限り上位を狙いたい、速く走りたいのであれば、荷物は必要最低限に抑え軽量化を図る必要がある。その代わり、快適な生活と食料がなくなるかもしれない不安と付き合っていかなければならない。逆に、レース中の景色やビバークでの食事を楽しみたい、できる限り快適な生活を目指したいのであれば、荷物は重くなり、スピードを出して走ることも難しくなってしまう。

実際に持参した食料や装備に関しては、リストを参考にしていただきたい。特にシューズの中に砂が入らないようにする「ゲーター」は必要不可欠だ。

今大会も多くのランナーがマメや靴擦れ、爪のトラブルを抱えながら走っていた。長距離そして長時間走ることで足が浮腫み、岩場に爪先をぶつけてしまうことも多いため、普段履いているシューズよりも1.5cm程大きなシューズを履くこと、できればオーダー仕様のインソールがあれば心強い。

サハラマラソンをどう攻略するか?

レースを攻略するよりも前に、日常の世界そして情報から隔離された場所での生活を楽しめるかどうか、そして自給自足生活と11日間を共にするテントメンバーとのコミュニケーション、助けあう心が何よりも大切である。

サハラ砂漠というと「砂丘」をイメージしてしまうが、実際のコースでは3割程度しかない。割合としては岩場のコースが最も多く、崖や湖が干上がってできたような走りやすいコースも一部存在する。

ポイントは走れるところは極力走り、砂丘や岩山など歩いたほうが良いところは走らずに歩くことだろう。4日目のノンストップステージ(91.7km)では暗闇の中、ヘッドライトと大会から支給されるケミカルライトの光のみを頼りに進まなければならない。当然足場は悪いので、走ることは大きなリスクを伴う。しかし、歩いた方が良いところも単に歩くのではなく、「いかに速く歩けるか?」が重要なポイントである。

走ることに関しても、地面を蹴って走るのではなく、水平移動するように足を置いて走ると下肢へのダメージも少なく安定して走ることができる。重心が上下動してしまうと着地が不安定になり、捻挫の原因にもなる。さらに、着地の度に10㎏前後の重さがストレスとなるので、特にストレスに慣れていない首や肩が痛くなる。

多くのランナーが砂丘の上りでは歩くことが多いが、下りは地面反力が殆ど無いので滑り飛ぶように走れるのが、大きな特徴である。

各ステージのゴールから、次のステージのスタートまでのリカバリーにも気を配らなければならない。ゴール後のストレッチはもちろん、食事は全てインスタントものに頼らざるを得ないため、アミノ酸やクエン酸等のサプリメントを活用しながら疲労回復に努めたい。

今大会を踏まえて、新たな準備を加えるなら?

やはり、サハラマラソンを目指すのであれば、トレーニングの一環としてトレイルランや登山は取り入れたい。バランスディスクやバランスパッドを活用したトレーニングも有効だ。ロードとは違い、コースの8割は足場が悪い不安定な場所である。私の場合、シューズのソールが厚いこともあり、何度か捻挫しそうになった。

加えて「歩く」練習を取り入れることをお勧めする。ランナーが速く歩く練習をすることは殆ど無いだろう。だが、歩幅で勝る欧米のランナーに遅れを取らないためには、ピッチを上げて歩くしかない。他の日本人ランナーの多くも「歩くスピードを上げたい!」と痛感したに違いない。

とは言え、どんなに完璧に準備をしたとしても、レースが始まってしまえば想定していないアクシデントは付きものである。

思ってもみないアクシデントが起こってしまった時の対応力、修正力、そしてパトリック氏が言うように、謙虚さと強い精神力が何より必要不可欠であろう。

まとめ

サハラマラソンは「世界一過酷なマラソン」とも評されるため、ストイックさや苛酷さばかりが注目されているが、パトリック氏が説明している通り、準備をしっかりと行い、自分自身に謙虚になり、全てに情熱を注ぐことさえできれば、必ず完走ができるはず。何日にも渡る苦しいレース、そして自給自足の生活から開放され、完走できた時の達成感は格別である。

サハラマラソンはきっとあなたの挑戦を待っていることでしょう。

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ライター紹介 ライター一覧

浦中宏典

浦中宏典

ビジネスアスリート
データサイエンティスト

株式会社ストレッチサポート 代表取締役
1983年8月12日 長崎県長崎市生まれ

高校卒業後、大学でスポーツ科学(運動生理学・バイオメカニクス)を学び、トレーナーとしてスポーツの世界で実績を積む。

主な活動実績はJR東日本硬式野球部、サントリーサンゴリアス(ラグビー・トップリーグ)、国際テニストーナメント、世界陸上大阪大会、日本大学フェニックス(アメリカンフットボール)他。2011年、サハラマラソンランナーのトレーナーとしてトレーニングと身体のケアを担当。

2011年4月に会社を設立。
テクノロジーの力でスポーツアクティビティを今より楽しくすることで、「もっとチャレンジしたくなる世の中を創る」
ために事業活動を行っている。

2015年4月に開催されたサハラマラソンにランナー兼トレーナーとして出場・完走。
2017年9月にはアメリカ ユタ州を中心に開催されるGrand to Grand Ultra(7日間6ステージ273㎞のレース)に参加し完走を果たす。

自分自身も実践者として、常に挑戦を続けている。

<メディア掲載実績>
テレビ NHKまちかど情報室
雑誌 Tarzan(マガジンハウス)
雑誌 トレイルラン2017夏号(山と渓谷社)
新聞 長崎新聞
ラジオ 中央FM
専門誌 月刊トレーニング・ジャーナル 他多数

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